下部構造の点検・補修・補強|基礎・橋台・橋脚の損傷と耐震補強の方法を解説

下部構造の点検・補修・補強 橋梁

橋を足元で支えているのが、橋台(きょうだい)・橋脚(きょうきゃく)・基礎(きそ)からなる「下部構造」です。橋の両端で土を受け止めるのが橋台、橋の中間で桁を支えるのが橋脚、そして橋台や橋脚を地盤に固定するのが基礎です。下部構造は、橋にかかるすべての力を最終的に地盤へ伝える、いわば橋の土台です。

その土台が傷めば、橋全体の安全が脅かされます。しかも下部構造は、水中や地中にあって見えにくく、傷んでも手当てが難しいという、やっかいな性質を抱えています。ここでは、下部構造の点検から、特有の損傷、そして耐震補強を含む補修・補強の方法までを見ていきます。

下部構造の点検——材料で見方が変わる

下部構造の点検は、その部材が何でできているかによって、見方が変わります。

橋台や橋脚には、鉄筋コンクリートが使われることが多くあります。その場合は、一般の鉄筋コンクリート構造と同じように点検します。具体的には、ひび割れ、剥離(はくり)や鉄筋の露出、漏水や遊離石灰(ゆうりせっかい。コンクリートから溶け出した石灰分)、浮き、変色などが、主な着目点になります。コンクリート部材の点検の考え方は、コンクリート橋の場合と共通します。

【コンクリート橋の点検・補修・補強|劣化のしくみと補修・補強の方法を解説】
https://hashiwatashi.com/concrete-bridge-maintenance/

一方、橋脚が鋼でできている場合は、一般の鋼構造物として点検します。腐食、亀裂、ボルトのゆるみや脱落、破断、防食機能の劣化などが、主な着目点です。こちらは、鋼橋の点検の考え方と共通します。

【鋼橋の点検・補修・補強|鋼材の損傷の種類と防食・補強の方法を解説】
https://hashiwatashi.com/steel-bridge-maintenance/

なお、橋脚が水中にある場合、その水面下の部分は、陸上のようには見ることができません。そのため、潜水士による調査や、水位が下がる時期をねらった点検など、特別な手だてが必要になります。下部構造の点検が難しいと言われるのは、こうした事情からです。

下部構造の損傷の例

下部構造の損傷を、部位ごとに整理すると、次のようになります。

損傷部位主な損傷損傷の原因
基礎沈下・傾斜・移動地盤の支持力不足、不同沈下、洗掘、ネガティブフリクション、側方流動、地震など
基礎洗掘(せんくつ)台風・豪雨時の流水などによる、基礎まわりの土砂の流出
コンクリートの橋台・橋脚ひび割れ温度・乾燥収縮、塩害・中性化、かぶり不足、アルカリ骨材反応、凍害、基礎の洗掘や沈下
コンクリートの橋台・橋脚剥離・鉄筋露出施工時の締固め不足、凍害、かぶり不足、塩害・中性化
コンクリートの橋台・橋脚漏水・遊離石灰打ち継ぎ目の施工不良、締固め不足
コンクリートの橋台・橋脚浮き鉄筋やPC鋼材の腐食による膨張
鋼製の橋脚腐食漏水、雨水の侵入、塗装の塗り替え時の素地調整不足
鋼製の橋脚亀裂段差による衝撃荷重や過荷重、溶接部の欠陥による疲労
鋼製の橋脚ボルトのゆるみ・脱落遅れ破壊、締付け不足、振動
鋼製の橋脚変形過荷重、車両や船舶の接触

とくに基礎に特有なのが、聞き慣れない言葉かもしれませんが、「ネガティブフリクション」や「側方流動(そくほうりゅうどう)」です。ネガティブフリクションは、まわりの軟弱な地盤が沈むときに、杭を下向きに引きずり込もうとする力のことです。側方流動は、軟弱な地盤が横方向に動いて、基礎を押してしまう現象です。こうした地盤がらみの原因が、基礎の沈下や傾きを引き起こします。

基礎には、地盤の固い層に直接据える直接基礎や、深い杭で支える杭基礎(くいきそ)などがあります。とくにこわいのが、橋の一部だけが不揃いに沈む「不同沈下(ふどうちんか)」です。橋全体が同じように沈むぶんにはまだしも、片側だけが沈めば、橋は傾き、上の桁にも無理な力がかかってしまいます。基礎の損傷は、このように下から上へと、橋全体に影響が及んでいくのです。

下部構造ならではの損傷と「特別な配慮」

下部構造には、上部構造には見られない、特有の損傷があります。

ひとつは、橋台の移動や傾斜です。橋台は、その背面にある土の圧力(土圧)を受け止めています。この背面からの土圧によって、橋台が前へ押し出されたり、傾いたりすることがあります。とくに橋台の傾斜は、その上に乗る桁、つまり上部構造の崩壊に直ちにつながりかねないため、注意が必要です。橋台の傾きは、桁の端の部分と、橋台の壁(パラペット)との位置関係を見ることで気づけることがあり、下げ振り(さげふり。糸におもりを下げた道具)を使えば、傾きの量を測ることもできます。

もうひとつは、洗掘による沈下や傾斜です。橋脚が河川の中や海の中にある場合、台風や豪雨の流れが基礎まわりの土砂を削り取り、橋脚を沈下させたり傾けたりします。また、橋台が杭基礎で支えられている場合にも、沈下や移動、傾斜が起こることがあります。橋台の背面が沈むと、橋とその先の道路とのつなぎ目に段差ができ、車が通るたびに衝撃が加わって、橋台まわりの傷みをさらに早めてしまうこともあります。

そして、下部構造の損傷には「特別な配慮」が欠かせません。なぜなら、橋脚の多くは水中や地中にあって、損傷を見つけにくいうえに、見つけても、すぐに対応するのが難しいからです。対応が間に合わなければ、通行車両の重量制限や通行止めといった規制が必要になり、最悪の場合は落橋にもつながります。だからこそ、わずかな異常も見落とさず、できるだけ早い段階でとらえることが、下部構造ではとりわけ重要になります。下部構造の点検と補修は、こうした重大な事態を防ぐ、いわば最後の砦なのです。

下部構造の補修・補強の例

下部構造の補修・補強には、次のような方法があります。

部位・区分対策方法目的
コンクリート橋台の補修コンクリート塗装表面被覆・防水
コンクリート橋台の補修鳥害対策糞による被害を避ける
コンクリート橋脚の補修断面修復コンクリート表面の修復
コンクリート橋脚の補強炭素繊維シート巻き立て耐震補強
コンクリート橋脚の補強コンクリート巻き立て耐震補強
コンクリート橋脚の補強鋼板巻き立て耐震補強
コンクリート橋脚の補強アラミド繊維巻き立て耐震補強
コンクリート橋脚の補強あて板補強梁柱の隅角部(ぐうかくぶ)の応力を低減
鋼製橋脚の補修・補強鋼構造物に準じる

橋台の補修では、表面を塗装して防水する方法のほか、ユニークなところでは「鳥害対策」もあります。鳥のフンによる被害を防ぐためのもので、橋ならではの維持管理の一面です。また、コンクリート橋脚で剥離が起きた箇所は、「断面修復」によって、欠けた部分を修復材で埋め戻し、元の断面を取り戻します。鉄筋が露出してしまっている場合は、そのさびを落として保護したうえで埋め戻す、といった手当てが行われます。

そして、橋脚の補強で大きな位置を占めるのが「耐震補強」です。橋脚のまわりを、炭素繊維シート、コンクリート、鋼板、アラミド繊維といった材料で「巻き立てる」ことで、地震の力に対する粘り強さを高めます。材料によって持ち味は異なり、鋼板は高い補強効果が得られ、炭素繊維やアラミド繊維のシートは軽くて施工がしやすく、コンクリート巻き立ては断面そのものを増やして強くします。橋脚の状況や現場の条件に応じて、これらが使い分けられます。実際、大きな地震への備えとして、こうした震災補強の工事は全国で進められてきました。耐震補強の考え方そのものについては、別の記事でも解説しています。

【耐震設計の考え方|地震に強い橋を造るための3つの考え方】
https://hashiwatashi.com/bridge-seismic-design/

ただし、注意したいことがあります。巻き立てに使ったコンクリートやシートといった補強材も、年月とともに劣化していきます。せっかくの補強が効き続けているか、補強材そのものが傷んでいないかを確かめることも、点検の大切な役目です。補強したら終わり、ではないのです。

まとめ

この記事では、下部構造の点検・補修・補強について、損傷の例から耐震補強の方法までを見てきました。要点を振り返ります。

  • 下部構造(橋台・橋脚・基礎)は、橋の力を地盤へ伝える土台で、その損傷は橋の安全に直結する
  • 点検は、RC製なら鉄筋コンクリート構造として、鋼製なら鋼構造物として行う
  • 基礎では沈下や洗掘、橋台では土圧による移動・傾斜が、特有の損傷となる
  • 水中・地中にあって発見も対応も難しいため、落橋を防ぐ「特別な配慮」が必要になる
  • 橋脚の補強では、各種の巻き立てによる耐震補強が広く行われ、補強材自体の点検も欠かせない

目に触れにくく、つい見落とされがちな下部構造。けれども、橋を足元で支えるその土台にこそ、橋の安全の土台があります。見えない部分に心を配ることが、橋を未来へ支え続ける力になります。鋼橋・コンクリート橋、そして下部構造——橋を構成するそれぞれの部分に目を行き届かせてこそ、一つの橋を丸ごと守ることができるのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました