付属物の点検・補修・補強|支承・伸縮装置・標識を守る点検の種類と対策を解説

付属物の点検・補修・補強 橋梁

橋や道路には、主役となる構造のほかにも、安全を支えるたくさんの「付属物(ふぞくぶつ)」があります。標識、照明施設、支承(ししょう)、伸縮装置、防護柵(ぼうごさく)、排水施設などです。これらは目立たない存在ですが、傷めば事故や交通への支障につながるため、点検と手当てが欠かせません。

ここでは、付属物の点検の目的や種類から、代表的な損傷、そして補修・補強の方法までを見ていきます。橋の付属物そのものの役割については、別の記事でまとめています。

【橋の付属物とは?高欄・防護柵・排水施設の役割を解説】
https://hashiwatashi.com/bridge-accessories/

付属物の点検は何のため?

付属物の点検は、標識や照明施設といった付属物の現状を把握し、異常や損傷を早期に発見して、対策が必要かどうかを判断するために行います。それによって、第三者に被害が及ぶような事故を防ぎ、安全で円滑な道路交通を確保することが目的です。たとえば、標識や照明が倒れたり落下したりすれば、通行する人に直接の危険が及びます。付属物の点検は、橋を渡る人や、その下を通る人の安全を守る取り組みでもあるのです。

さらに、付属物の損傷は、橋本体の傷みにもつながります。たとえば、伸縮装置や排水施設に不具合があれば、そこから漏れた水が桁や支承をさびさせていきます。付属物を健全に保つことは、めぐりめぐって、橋そのものを守ることにもつながっているのです。

その基本となる考え方は、「弱点部」に着目することです。これまでに集められた付属物の不具合の事例や、構造そのものの特徴をふまえて、傷みが出やすい弱点をあらかじめ特定しておき、そこを重点的に調べて、損傷や異常の有無を確実につかみます。

付属物の点検——五つの種類

付属物の点検は、目的やタイミングによって、五つの種類に分けられます。

  1. 通常点検:道路の通常の巡回(じゅんかい)を行うときに実施する点検です。損傷の原因となる大きな揺れや変形、異常を見つけることを目的とします。
  2. 初期点検:付属物を設置した後や、仕様を変更した後の、比較的早い時期に行う点検です。初期に発生しやすい損傷や異常を、早めに見つけ出します。
  3. 定期点検:一定の期間ごとに行う点検です。構造全体の損傷とその程度を把握するとともに、過去の点検で見つかった損傷が、その後どう進んでいるかを確認します。
  4. 異常時点検:地震、台風、集中豪雨、豪雪などの災害が発生したとき、またはその恐れがあるときに行う点検です。付属物の安全性や、道路の機能が損なわれていないかを確認します。
  5. 特定の点検計画に基づく点検:特殊な条件をもつなど、とくに注意を要する付属物について、個々に作成した計画に基づいて行う点検です。

通常の見回りから、災害後の緊急の確認、そして特別な計画に基づくものまで、状況に応じて点検を使い分けることで、付属物の安全を保っています。

付属物の損傷の例

付属物には、どのような損傷が起きるのでしょうか。代表的なものを整理します。

損傷部位損傷の例損傷の原因
支承部機能の喪失、桁の移動地震時の衝撃、機能不全
支承部アンカーボルトの抜け出し、ストッパーやサイドブロックの破断地震による耐荷力の低下
支承部発錆(はっせい)・腐食、磨耗、支点の沈下経年劣化、土砂の堆積
伸縮装置(荷重支持型)フィンガーの欠損、ボルトの破損・抜け、陥没、充填材(じゅうてんざい)の脱落過荷重、繰り返し荷重による疲労、地震、支承の破損
落橋防止システム機能の喪失支承の損傷
剛性防護柵剥離振動、経年劣化

桁を支える支承は、地震の衝撃や経年の劣化によって、機能を失ったり腐食したりします。まわりに土砂が堆積すれば、支点が沈下することもあります。大きな地震では、支承を固定するアンカーボルトが抜け出したり、桁の動きを抑えるストッパーやサイドブロックが壊れたりすることもあります。一方、橋の伸び縮みを受け止める伸縮装置は、くり返しの荷重による疲労などで、フィンガーと呼ばれる櫛(くし)状の部分が欠けたり、本体が陥没したりします。支承と伸縮装置のしくみについては、それぞれくわしい記事があります。

【支承とは?橋を支える縁の下の力持ちを解説】
https://hashiwatashi.com/bridge-bearing/

【伸縮装置とは?橋の伸び縮みを支える継ぎ目の役割を解説】
https://hashiwatashi.com/bridge-expansion-joint/

また、地震のときに橋桁が落ちるのを防ぐ落橋防止システムは、その要となる支承が傷むと、機能を失ってしまうことがあります。落橋防止システムについては、こちらで解説しています。

【落橋防止システムとは?地震から橋を守るしくみを解説】
https://hashiwatashi.com/bridge-unseating-prevention/

このほか、コンクリート製の剛性防護柵(ごうせいぼうごさく)は、振動や経年の劣化によって表面が剥離することがあります。さらに、表には挙げていませんが、雨水を流す排水施設も大切な付属物です。落ち葉や土砂で詰まれば、水がうまく流れずにあふれ、その水が桁や支承の腐食を早める原因になります。橋を長持ちさせる鍵が「水の制御」にあることを思えば、排水施設の点検も決しておろそかにできません。

付属物の補修・補強の例

損傷が見つかった付属物には、その内容に応じて補修や補強を行います。

部位・区分対策方法目的
支承部(金属支承)の補修金属溶射(ようしゃ)耐久性を高め、防食機能の劣化を抑える
支承部(金属支承)の補修ゴムシートによる遮塩(しゃえん)飛んでくる塩分を遮り、腐食の進行を抑える
伸縮装置(荷重支持型)取替え部分的な取替えでは対応が難しいことが多いため
落橋防止システム取替え、部材の追加による補強落橋防止機能の回復・向上
剛性防護柵の補修剥離防止既設コンクリートの剥離を防ぐ

金属でできた支承は、金属溶射で表面を守ったり、ゴムシートで塩分を遮ったりして、腐食を抑えます。伸縮装置は、部分的に直すのが難しいことが多いため、丸ごと取り替えることがよくあります。落橋防止システムは、地震への備えの要であるだけに、取替えや部材の追加によって、その機能をしっかりと回復・向上させます。コンクリート製の防護柵については、表面が剥がれ落ちて第三者被害につながらないよう、剥離を防ぐ手当てを行います。付属物といっても、その役割に応じて、補修・補強の手だてはさまざまなのです。

不具合事例の収集と記録

付属物の点検では、その後の流れも大切です。点検そのものも、点検の種別や目的に応じて、関係者の役割と責任を明確にした体制で行うことが求められています。そのうえで、目視点検で得られた損傷の程度をもとに、場所ごとに対策の要否を検討し、次回の点検をいつ行うかも考えます。そして、対策が必要な損傷については、その原因を特定し、ふさわしい工法を選んだうえで、対策を実施します。

ここで欠かせないのが、「不具合事例の収集と記録」です。どんな付属物に、どんな損傷が、どんな原因で起きたのか。その一つひとつを集めて記録に残していくことが、次の点検に活きてきます。同じような損傷が、似た条件の付属物でくり返し起きることは少なくありません。だからこそ、過去の事例を知っていれば、次はどこに注意すべきかを先回りして見極められます。冒頭で述べた「弱点部に着目する」という点検の基本は、まさにこうして蓄えられた不具合事例の積み重ねがあってこそ成り立つものです。記録は、未来の点検を支える財産なのです。

なお、特殊な条件をもつ付属物については、一律のやり方ではなく、それぞれに合わせた点検計画を個々に作成して臨みます。

まとめ

この記事では、付属物の点検・補修・補強について、点検の種類から損傷の例、補修・補強の方法までを見てきました。要点を振り返ります。

  • 付属物の点検は、異常や損傷を早期に発見し、第三者被害の事故を防いで安全な交通を守るために行う
  • 基本は、過去の不具合事例と構造の特徴から「弱点部」を特定して着目すること
  • 点検には、通常・初期・定期・異常時・特定計画に基づくものの五つの種類がある
  • 支承・伸縮装置・落橋防止システム・防護柵などに、それぞれ特有の損傷と対策がある
  • 不具合事例を集めて記録に残すことが、次の点検を支える土台になる

目立たないけれど、確かに橋と道路の安全を支えている付属物。その一つひとつに目を配り、得られた気づきを記録として残していくことが、橋を末永く安全に使い続けるための、地道で大切な営みになります。

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