トラス橋を詳しく知ろう|構造の原理と種類を解説

橋梁の基礎

はじめに

前回の記事では、桁橋(けたばし)について鈑桁橋(ばんげたきょう)と箱桁橋(はこげたきょう)の違いを解説しました。

【内部リンク:桁橋を詳しく知ろう|鈑桁橋・箱桁橋の違いと特徴】

今回は、桁橋に続いて「トラス橋」を取り上げます。

新幹線で東京から大阪へ向かう途中、静岡県を通過する際に、車窓の遠くに長大なトラス橋を見かけたことはないでしょうか。あの橋こそが、東海道本線の「天竜川橋梁」です。

橋の側面に三角形が連なる独特の見た目は、誰もが一度は目にしたことがあると思います。しかし、なぜトラス橋はあのような形をしているのでしょうか。今回はその構造の原理から、種類や特徴までを順に見ていきます。

トラス橋とは

トラス橋とは、細長い直線部材を三角形に組み合わせた骨組み構造を持つ橋のことです。

「トラス(truss)」という言葉は、英語で「縛る」「束ねる」といった意味を持ちます。直線の部材を三角形に組み、それを連ねて橋全体を構成する様子は、まさに部材を縛り束ねている姿に見えます。

桁橋が「桁」という1本の梁で荷重を支えるのに対し、トラス橋は複数の細い部材を組み合わせて荷重を分担する点が大きな違いです。

トラス橋を支える力学的なしくみ

トラス橋の構造を理解するうえで、いくつかの基本的な用語と考え方を押さえておきます。

部材を結ぶ「格点」とは

部材どうしが結合する点を「格点(かくてん)」と呼びます。設計上、この格点はヒンジ(ピン)として扱われ、自由に回転できる接合点と仮定されます。

ヒンジと仮定することで、格点には部材を回転させようとする力(モーメント)が伝わらないと考えることができます。これにより、各部材の力の流れがシンプルに整理され、設計しやすい構造となります。

部材に作用する「軸力」

格点をヒンジと仮定し、荷重を格点に集中して作用させることで、各部材には「軸力(じくりょく)」のみが作用すると考えることができます。

軸力とは、部材の長さ方向に沿って作用する力のことです。軸力には次の2種類があります。

  • 圧縮力:部材を押し縮めようとする力
  • 引張力:部材を引き伸ばそうとする力

圧縮力を受ける部材を圧縮材、引張力を受ける部材を引張材と呼びます。トラス橋を構成する部材は、それぞれが圧縮材か引張材として役割を分担しているのです。

軸力のみを受ける構造であるため、せん断力や曲げモーメントが生じにくい点も、トラス橋の特徴の1つです。

ただし、圧縮力を受ける細長い部材には「座屈(ざくつ)」という不安定現象が生じやすいため、設計や施工では注意が必要です。

なぜ三角形なのか

トラス橋がなぜ三角形を基本単位とするのか。その理由は、三角形が持つ幾何学的な性質にあります。

四角形は、外から力を加えると簡単に変形してしまいます。一方、三角形は3辺の長さが決まると形が一意に定まり、力を加えても崩れにくい性質を持ちます。

この変形しにくさが、トラス橋の安定性を支えています。三角形をいくつも連ねることで、橋全体の形を保ちながら荷重を効率的に伝えることができるのです。

トラス橋の特徴

トラス橋には、以下のような特徴があります。

  • 三角形の細長い部材を組み合わせた骨組み構造である
  • 部材と部材の間に空間が多く、構造として効率的である
  • 強度の割に橋全体を軽くできる
  • 同じ部材を多く使うため、製作がしやすい
  • 部材の組み方によって、さまざまな形にデザインできる
  • 骨組みのリズムが生み出す独特の美しさがある

骨組み構造であるため、桁橋と比べて橋そのものの重量を軽くできる点は、大きな強みだと考えます。重量を抑えることで、橋脚や基礎への負担も小さくなります。

トラスの代表的な種類

トラスにはさまざまな形式がありますが、ここでは代表的な3種類を取り上げます。いずれも、考案した人の名前が形式名の由来になっています。

ワーレントラス

斜材を「V字」と「逆V字」が交互に並ぶように配置した形式です。鉛直材を持たないシンプルな構成のものから、鉛直材を加えた構成のものまであります。部材の数が比較的少なく、すっきりとした見た目が特徴です。

プラットトラス

斜材を橋の中央に向かって「ハ」の字状に配置した形式です。斜材が引張材、鉛直材が圧縮材として働きます。長い部材を引張材として使えるため、鋼橋で広く採用されています。

ハウトラス

プラットトラスとは逆向きに斜材を配置した形式です。斜材が圧縮材、鉛直材が引張材として働きます。木造のトラス橋で多く用いられてきた形式です。

身近に見られるトラス橋

身近にあるトラス橋として、2記事目で関西国際空港連絡橋を紹介しました。

【内部リンク:橋梁の種類を解説!構造形式で分かる5つの橋の違い】

関西国際空港連絡橋は、空港島と本州を結ぶ全長3,750mの橋で、トラス橋として世界最長です。空港利用者の多くが、この橋を渡って空港へ向かいます。

もう一つ、新幹線で東京〜大阪を移動する方なら、車窓から目にできるトラス橋があります。静岡県浜松市付近を流れる天竜川に架かる、東海道本線の「天竜川橋梁」です。

天竜川橋梁の下り線は、1913年(大正2年)に完成しました。形式は「ダブルワーレントラス」と呼ばれる、ワーレントラスの斜材をX字状に交差させた発展形で、全長は1,208.8mに及びます。戦前に造られた鉄道橋梁としては、現存する最長のトラス橋です。

新幹線が渡る橋とは別の橋ですが、新幹線の車窓からも遠くにその姿を見ることができます。次回の新幹線移動の際に、ぜひ車窓から探してみてください。明治から大正、そして現代まで、100年以上にわたって列車を支え続けてきた橋の姿が、きっと見つかるはずです。

まとめ

今回は、トラス橋について構造の原理から種類、身近な実例までを見てきました。要点を振り返ります。

  • トラス橋は、細長い直線部材を三角形に組み合わせた骨組み構造の橋である
  • 格点をヒンジと仮定することで、各部材には軸力のみが作用すると考えられる
  • 三角形は形が崩れにくく、構造として安定している
  • 強度の割に軽く、製作しやすく、デザインの幅も広い
  • 代表的な種類にワーレントラス、プラットトラス、ハウトラスがある

トラス橋は、構造の合理性と見た目の美しさを両立した橋です。鉄道橋や道路橋として、私たちの暮らしを長く支え続けています。

なお、今回は構造形式の話を中心にまとめました。トラス橋を含めた橋の用途による分類(道路橋・鉄道橋など)や、上路・下路といった分類については、別の機会に改めて取り上げたいと思います。

【内部リンク:橋梁の種類|用途による分類(道路橋・鉄道橋・歩道橋)】

次回も、橋梁の世界をさらに広げていく内容をお届けします。お楽しみに。

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