プレストレストコンクリート橋を詳しく知ろう|PC橋の構造と特徴を解説

橋梁の基礎

はじめに

前回の記事では、コンクリートの弱点を鉄筋で補った「鉄筋コンクリート橋(RC橋)」について解説しました。

今回は、RC橋からさらに発展した「プレストレストコンクリート橋(PC橋)」について解説します。RC橋とは何が違うのか、どんな仕組みでより長い支間長を実現しているのか、一緒に見ていきましょう。

プレストレストコンクリート橋(PC橋)とは

プレストレストコンクリート橋は、英語で Prestressed Concrete Bridge と表現することから、略して「PC橋」とも呼ばれます。「Prestressed」は「あらかじめ応力を与えられた」という意味です。

PC橋は、コンクリートの引張に対する弱点をRC橋よりもさらに補強するために、緊張材を用いてあらかじめコンクリートを圧縮しておく構造です。

PC技術が生まれたことで、コンクリート橋はより長い支間長を実現できるようになり、橋梁の世界に新しい可能性が広がりました。

なぜプレストレスを与えるのか

PC橋の仕組みを理解するには、もう一度コンクリートの基本的な性質を思い出す必要があります。

コンクリートには次のような性質があります。

  • 圧縮には強い(押される力に耐える)
  • 引張には弱い(引っ張られる力に弱い)

RC橋では、引張を受ける部分に鉄筋を入れることで、コンクリートが苦手な引張力を肩代わりさせていました。しかし、RC橋にも限界があります。荷重が大きくなると、引張側のコンクリートにひび割れが生じてしまうのです。

「それなら、コンクリートに引張がかかる前に、あらかじめ圧縮力を加えておけばいい」

この発想から生まれたのがプレストレストコンクリート(PC)の技術です。

あらかじめコンクリートに圧縮力を入れておけば、後から引張力が作用しても、その引張をプレストレスの圧縮で打ち消すことができます。結果として、コンクリートに引張力が直接かからず、ひび割れが入りにくい構造になります。

プレストレスの仕組み|PC鋼材の役割

コンクリートにプレストレス(緊張力)をかけるには、「PC鋼材(ピーシーこうざい)」と呼ばれる高強度の材料を使います。

PC鋼材を引っ張った状態でコンクリートに伝えると、コンクリートには圧縮力が入り、PC鋼材には引張力が残ります。この引張られたPC鋼材が、コンクリート全体に圧縮力を保ち続ける役割を果たします。

このようにコンクリートに圧縮力を導入することで、部材の支点間距離を大きくしても構造的に強度が増し、加えて耐久性・水密性も向上します。

プレテンション方式とポストテンション方式

プレストレスの与え方には、大きく2つの方式があります。

プレテンション方式

「プレテンション方式(Pre-tension)」は、コンクリートを打ち込む前にPC鋼材を緊張しておく方式です。

手順は次のようになります。

  1. PC鋼材をあらかじめ所定の位置に設置し、力を加えて緊張しておく
  2. その状態でコンクリートを打ち込む
  3. コンクリートが硬化した後に、緊張力を解放する

緊張力を解放すると、PC鋼材が縮もうとする力がコンクリートに伝わり、コンクリートに圧縮力(プレストレス)が与えられます。

ポストテンション方式

「ポストテンション方式(Post-tension)」は、コンクリートが硬化した後にPC鋼材を緊張する方式です。

手順は次のようになります。

  1. コンクリート部材の中にあらかじめシース(鞘管)を通しておき、コンクリートを打ち込む
  2. コンクリートが硬化した後、シースの中にPC鋼材を通す
  3. PC鋼材を引っ張って緊張させる
  4. PC鋼材を部材の端部で固定する

「プレ(先)にテンション(緊張)するか」「ポスト(後)にテンションするか」という違いです。名前の通りで分かりやすいですね。

内ケーブル工法と外ケーブル工法

プレストレストコンクリート橋には、さらに「PC鋼材をどこに配置するか」によって2つの工法があります。

  • 内ケーブル工法:PC鋼材をコンクリート部材の内部に配置する方法
  • 外ケーブル工法:PC鋼材をコンクリート部材の外部に配置する方法

どちらを採用するかは、橋の規模や設計条件、維持管理のしやすさなどによって選ばれます。

PC橋の長所

PC橋には、次のような長所があります。

「設計荷重を受けてもひび割れを生じない構造物を造れる」 プレストレスの効果により、設計上想定している荷重に対しては、ひび割れが入らない構造を合理的・経済的に実現できます。

「RC橋と比べて断面寸法を小さくできる」 コンクリートの全断面が有効に利用できるため、同じ性能を発揮するのに必要な断面寸法を、RC橋より小さくすることができます。

「衝撃荷重や繰り返し荷重に強い」 弾力性があり復元性が強いため、衝撃や繰り返しの荷重に対する抵抗力が大きいという特徴があります。

「長い支間長を実現できる」 プレストレスの効果で、コンクリート橋でありながら長い支間長を実現できます。これがPC橋の最大の強みです。

PC橋の短所・注意点

一方、PC橋には次のような短所や注意点もあります。

「耐火性に注意が必要」 PC鋼材のような高強度鋼材は、高温に対して強度が急激に低下します。そのため耐火性を考えるときには、鋼材を広く分布させるとともに「かぶり」(コンクリート表面から鉄筋表面までの最短距離)を大きくする必要があります。

「製作・運搬・架設に注意が必要」 作用する荷重の大きさや方向に敏感であるため、製作・運搬・架設の各段階で注意深い取り扱いが求められます。

PC橋の用途

PC橋は次のような形式の橋に幅広く使われます。

  • 床版橋:薄い板状のコンクリートで構成される橋
  • 桁橋:道路橋・鉄道橋として広く使われる
  • アーチ橋:圧縮力に強いコンクリートの特性を活かした形式

特に中支間長から長支間長の橋で、PC橋は強みを発揮します。

身近なPC橋の実例|長生橋

日本で最初のプレストレストコンクリート道路橋として知られているのが、石川県七尾市の「長生橋(ちょうせいばし)」です。

昭和27年(1952年)2月に完成したこの橋は、七尾市の市街地を流れる「御祓川(みそぎがわ)」に架けられました。施工は当時の東日本重工業株式会社七尾造船所(現在の株式会社ピーエス三菱)が手がけ、戦後の混乱期から復興期へと向かう時代に、日本のPC技術の出発点となった構造物です。

工法はプレテンション方式が採用されました。当時はまだPC技術の黎明期で、設計や施工には多くの試行錯誤があったと記録されています。

長生橋は約50年にわたって道路橋として供用された後、平成13年(2001年)9月に河川改修にともなって撤去されました。しかし、その歴史的価値の高さから、現在は七尾市郊外の希望の丘公園に一部が移設され、歩道橋として保存されています。

22記事目で紹介した「日ノ岡第11号橋」が日本のRC橋の出発点であるのに対し、長生橋は日本のPC橋の出発点。コンクリート橋の発展史を語るうえで、どちらも欠かせない存在です。

まとめ

今回は、プレストレストコンクリート橋(PC橋)について解説しました。

  • コンクリートにあらかじめ圧縮力(プレストレス)を入れておくことで、引張による弱点を克服した構造
  • PC鋼材を引っ張ることで、コンクリートに圧縮力を導入する
  • プレテンション方式とポストテンション方式の2つの工法がある
  • PC鋼材の配置によって、内ケーブル工法と外ケーブル工法がある
  • RC橋より長い支間長を実現でき、ひび割れにも強い
  • 耐火性や運搬・架設には注意が必要

PC橋は、日本の道路橋において大きな割合を占める、現代の橋梁の主役の1つです。次に橋を見かけたら、それがRC橋なのかPC橋なのか、想像しながら観察してみると面白いかもしれません。

次回は、鋼とコンクリートのそれぞれの長所を活かした「複合橋(ふくごうきょう)」について解説する予定です。鋼橋・RC橋・PC橋を学んできた流れの集大成として、一緒に見ていきましょう。


【鋼橋を詳しく知ろう|材料の特性と構造の特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/steel-bridge-details/

【鉄筋コンクリート橋を詳しく知ろう|RC橋の構造と特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/reinforced-concrete-bridge-details/

【橋梁の種類|材料による分類(鋼・コンクリート・木)】 https://hashiwatashi.com/bridge-types-by-material/

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