コンクリート橋の施工|品質を決める生コン管理ときめ細やかな段取り

コンクリート橋の施工 橋梁の基礎

前回は、工場で部材をつくり、現場で組み立てて架ける鋼橋の施工を取り上げました。コンクリート橋の施工は、これとは少し性格が違います。鋼橋の部材が工場で「完成品」として運ばれてくるのに対し、コンクリート橋では、材料そのものが現場で固まり、橋の一部へと姿を変えていきます。

つまりコンクリート橋では、固まる前の生コンクリート(以下、生コン)の品質と、固まるまでの段取りが、そのまま橋の品質と寿命を左右します。ここでは、コンクリート橋の施工で技術者が何に目を配っているのかを、現場の視点からたどっていきます。

【鋼橋の施工】
https://hashiwatashi.com/steel-bridge-construction/

コンクリート橋で特に気をつけたい三つの欠陥

コンクリート橋の施工には注意すべき点がいくつもありますが、なかでも代表的なのが「鉄筋のかぶり不足」「加水による単位水量の増加」「PCのグラウト不良」の三つです。

「かぶり」とは、鉄筋を覆うコンクリートの厚みのことです。この厚みが足りないと、外から入り込む水分や塩分が鉄筋に届きやすくなり、鉄筋の腐食(ふしょく)が早まります。鉄筋がさびて膨張すれば、まわりのコンクリートを内側から押し割ってしまいます。

「加水」とは、現場でやわらかくしようとして生コンに水を足してしまうことです。水を足すと単位水量(コンクリート1立方メートルあたりの水の量)が増え、施工はしやすくなりますが、強度が下がり、乾燥収縮によるひび割れも起きやすくなります。一見ありがたい一手間が、橋の弱点をつくってしまうわけです。

「PCのグラウト不良」は、プレストレストコンクリート橋(PC橋)に特有の問題です。PC橋では、緊張(きんちょう)させたPC鋼材で橋に圧縮の力をあらかじめ与えています。このPC鋼材を保護するために、すき間へ充填するのがグラウトです。グラウトの詰まりが悪いと、その空洞から水分が入り込み、橋の力の源であるPC鋼材が腐食してしまいます。

【プレストレストコンクリート橋を詳しく知ろう|PC橋の構造と特徴を解説】
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生コンは「受け入れ時」が勝負——五つの試験

コンクリートは、いったん固まってしまえばあとから手直しすることが難しい材料です。だからこそ、現場に運ばれてきた生コンを受け入れる段階での確認が重要になります。代表的な試験を整理すると、次のとおりです。

試験確かめること
スランプ試験やわらかさ(流動性)が目標値以下に収まっているか
空気量試験凍結融解に対する抵抗性
塩化物試験塩化物の量(鉄筋の腐食を防ぐため)
練り混ぜ後の経過時間流動性が保たれているか
単位水量試験単位水量が許容値以下に収まっているか

これらは、いわば生コンの「健康診断」です。工場で正しくつくられていても、運搬の途中で時間が経ちすぎたり、現場で水を足されたりすれば、性質は変わってしまいます。受け入れの一手間を省かないことが、品質を守る最初の関門になります。

コンクリートは「段取り八分」——きめ細やかな打設計画

良い生コンを受け入れても、打ち込み方の段取りが悪ければ、品質は活かせません。コンクリート橋の施工では、きめ細やかな打設(だせつ)計画が欠かせません。

打設計画では、打ち込む順序、区画ごとの数量、打ち継目(うちつぎめ)の位置などを事前に決めておきます。あわせて、打設量に見合うだけの作業員やバイブレーターの数を確保しておくことも大切です。人や機械が足りなければ、打ち込みが間に合わず、先に打ったコンクリートが固まり始めてしまいます。

ここで注意したいのが「コールドジョイント」です。先に打ったコンクリートと後から打ったコンクリートが一体化せず、境目に弱い継ぎ目ができてしまう現象を指します。これを防ぐには、生コンが固まり始める前に次を打ち重ねられるよう、運搬から打ち込みまでの流れを止めない輸送計画が必要になります。鋼橋が部材を「運んで組む」のに対し、コンクリート橋は生コンを「途切れさせずに流し込む」段取りが勝負どころと言えます。

固まるまで支える——型枠と支保工

固まる前のコンクリートは、自分で形を保つことができません。その形を決め、固まるまで支えるのが型枠(かたわく)と支保工(しほこう)です。

型枠は、コンクリートの形をつくる「鋳型」にあたります。セメントペーストが漏れ出さないようにすき間なく組み、固まるまでの圧力に耐える強度を持たせる必要があります。型枠の良し悪しは、そのまま仕上がりの面の美しさや寸法の正確さにつながります。

支保工は、その型枠やコンクリートの重さを下から支える仮設の構造物です。支保工には、十分な強度を確保することに加えて、変形を抑える剛性(ごうせい)も求められます。支えがわずかに沈んだり傾いたりするだけで、固まる前のコンクリートの形が狂ってしまうからです。架設の途中では、橋全体の構造が刻々と変化します。仮設の支えが「主役」になる時間帯がある、という点は架設工事に共通する考え方です。

【橋を架けるときの考え方】
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打って、固めて、育てる——打設・締固め・養生

いよいよ打ち込みです。打設の前には、型枠の中を清掃し、コンクリート表面に浮いて固まった泥状の薄い層「レイタンス」を取り除いておきます。この処理を怠ると、新旧のコンクリートがうまく一体化しません。

打ち込んだら、バイブレーターでしっかりと締固め(しめがため)を行います。締固めは、コンクリートの中の余分な空気を抜き、すみずみまで密実に行き渡らせる作業です。これが不十分だと、内部に空洞が残り、強度や耐久性を損ないます。

打ち終わったあとに待っているのが、養生(ようじょう)です。コンクリートは、打って終わりではなく、固まりながら強さを「育てる」材料です。乾燥収縮によるひび割れを防ぐため、一定の期間、適当な温度で、表面を十分に湿った状態に保ちます。打ち込みという華やかな場面のあとの、地味だけれど欠かせない時間です。

ひび割れを減らす配合と混和材料の工夫

コンクリートの性質は、材料の「配合(はいごう)」、つまり混ぜ合わせる割合でも大きく変わります。乾燥収縮によるひび割れを減らしたいときは、必要なワーカビリティー(打ち込みやすさ)が得られる範囲で、細骨材(細かい砂)を減らし、粗骨材(粒の大きい砂利)を多くし、単位水量を減らすのが望ましいとされています。水を減らす工夫が、ここでも効いてきます。

さらに、セメント・水・骨材以外の材料を必要に応じて加えることもあります。これを混和材料(こんわざいりょう)と呼びます。体積の減少を補う膨張材、コンクリート中に細かな空気を含ませて凍結融解への抵抗性を高めるAE剤、少ない水でも流動性を保つ減水剤などがあり、目的に応じて使い分けられます。

「コンクリートの神様」が遺した言葉

コンクリートの施工の本質を言い当てた、印象深い言葉があります。日本のコンクリート工学の礎を築き、「コンクリートの神様」とも呼ばれた吉田徳次郎博士の言葉です。

吉田博士は、良いコンクリートも悪いコンクリートも、使う材料はセメント・水・骨材で変わらない、両者を分けるのはコンクリートについての知識と、施工に対する正直さ・親切さの程度の差である、と述べたと伝えられています。そして、良いコンクリートを作るには、セメント・水・骨材のほかに「知識と正直、親切とを加えなければならない」と続けたといいます。

同じ材料を使っても、現場での一手間を惜しまない正直さと、丁寧さがあるかどうかで、できあがるものは別物になる。受け入れ試験を省かない、加水でごまかさない、養生を切り上げない——この記事でたどってきた一つひとつの着目点は、まさにこの言葉が指していることそのものです。コンクリート橋の品質は、最後は現場に立つ人の姿勢に行き着くのだと思います。

まとめ——施工の品質は、橋の一生に地続き

コンクリート橋の施工は、固まる前の生コンの品質を見きわめ、固まるまでの段取りを整え、固まったあとも丁寧に育てる、という一連の流れでした。受け入れ時の五つの試験、コールドジョイントを防ぐ打設計画、型枠と支保工、締固めと養生、そして配合の工夫。どれも、地味でありながら品質を支える勘どころです。

そして、ここで気をつけてきたかぶり・加水・グラウトといった点は、いずれも「将来の劣化」と裏表の関係にあります。かぶりが足りなければ鉄筋が早くさび、水を足せばひび割れやすく、グラウトが不良ならPC鋼材が傷む。つまり、施工時の品質がそのまま橋の寿命を決め、その後の維持管理のしやすさにもつながっていきます。

架けるときの一手間が、何十年先の橋の姿を左右する。コンクリート橋の施工は、橋の一生と地続きの仕事なのです。

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