鋼部材の設計|部材のつなぎ方と座屈という現象

橋梁の基礎

はじめに

鋼でできた橋は、軽くて丈夫という優れた特徴を持っています。その鋼橋を設計するとき、設計者が特に気を配る点がいくつかあります。

その代表が、部材同士を「どうつなぐか」という問題と、鋼ならではの「座屈(ざくつ)」という現象への対策です。鋼の橋は、工場で作られた部材を運んで現場で組み立てるため、つなぎ目をどう設計するかが重要になります。また、鋼は薄くて強い材料であるがゆえに、特有の注意が必要な現象もあります。

この記事では、鋼部材の設計で重要になる「継手(つぎて)」と「座屈」について見ていきます。鋼を主要部材に使った橋の全体像については、以下の記事で解説しています。

【鋼橋を詳しく知ろう|材料の特性と構造の特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/steel-bridge-details/

鋼部材の設計の流れ

まず、鋼でできた桁の設計が、どのような流れで進むのかを大まかに見ておきましょう。

最初に、橋にかかる荷重を設定します。次に、断面力を計算するための構造モデルを作り、構造解析によって桁にかかる力を求めます。そのうえで、主桁の断面を設計していきます。このとき着目するのが、曲げに対する強さ、座屈への対策、そして継手部の設計です。最後に、細部の構造を決めていきます。

この流れの中で、鋼ならではの検討項目として浮かび上がってくるのが、継手と座屈なのです。

部材をつなぐ「継手」

鋼の橋の主要な部材は、鋼板や形鋼(かたこう)といった材料を組み合わせて作られます。これらの材料には大きさに限りがあり、また橋は工場から現場へ運んで組み立てるため、どこかで必ず部材同士をつなぐ必要が出てきます。このつなぎ目を「継手」と呼びます。

鋼部材をつなぐ方法には、大きく3つの種類があります。

溶接継手

溶接継手(ようせつつぎて)は、熱を使って鋼材を局部的に溶かし、結合する方法です。部材と部材の境目を溶かして一体化させるため、つなぎ目がなめらかで、力をスムーズに伝えられる利点があります。

現代の鋼橋では、工場での接合に溶接が広く使われています。突合せ溶接継手をはじめ、十字継手、T継手、角継手、重ね継手など、つなぐ部材の位置関係に応じてさまざまな種類があります。

高力ボルト摩擦接合継手

高力ボルト摩擦接合継手(こうりょくボルトまさつせつごうつぎて)は、強い力で締め付けられる特殊なボルトを使ってつなぐ方法です。

この方法の面白いところは、ボルト自体で力を支えるのではなく、ボルトで強く締め付けることで生じる「接合面の摩擦」によって力を伝える点です。手のひらを強く押し付け合うと、簡単には横にずれない、あの摩擦の力を利用するイメージです。締め付ける力が強いほど、また接合面が滑りにくいほど、大きな力を伝えられます。

ボルト1本だけでは不安定なので、つなぎ目の片側には2本以上のボルトを配置するのが基本です。現場での接合に多く使われる、信頼性の高い方法です。

リベット継手

リベット継手(リベットつぎて)は、部材に円形の孔(あな)をあけ、そこにリベットという金属の鋲(びょう)を打ち込んでつなぐ方法です。

かつての鋼橋では広く使われていた方法で、古い橋を見ると、整然と並んだリベットの頭を目にすることがあります。ただし、現在の新設の橋では、溶接や高力ボルトが主流となり、リベットはあまり使われなくなっています。

補修設計の現場では、古い橋にこのリベット継手が残っている場面に出会うことがあります。当時の技術で丁寧に組み上げられた継手を見ると、その時代の橋づくりの工夫が伝わってきます。古い橋を扱うときには、こうした過去の接合方法の特徴を理解しておくことも大切になります。

鋼ならではの現象「座屈」

鋼部材の設計で、もう一つ重要になるのが「座屈」への対策です。

座屈とは、細長い部材や薄い板が圧縮の力を受けたときに、突然横に振れて変形してしまう現象です。身近な例で言えば、薄いプラスチックの下敷きを両端から押すと、ある瞬間にぐにゃりと横に曲がってしまう、あの現象です。まっすぐ押しているのに、横に逃げるように変形してしまうのが座屈の特徴です。

鋼は強くて薄くできる材料です。これは大きな長所なのですが、薄いがゆえに、圧縮を受けたときに座屈を起こしやすいという弱点も併せ持っています。せっかく材料そのものが強くても、座屈を起こしてしまうと、本来の強さを発揮する前に変形してしまうのです。

座屈には、部材全体が大きく振れるもの、部材の一部分だけが波打つように変形するものなど、いくつかの種類があります。橋の桁のように薄い鋼板を組み合わせた部材では、特にこの座屈への配慮が欠かせません。

座屈を防ぐ「補剛材」

では、座屈をどう防ぐのでしょうか。その答えが「補剛材(ほごうざい)」です。

補剛材は、薄い鋼板に取り付けて、座屈しにくくするための補強材です。薄い板に当て木をするように、板の面に細長い部材を取り付けることで、板が横に振れるのを抑えます。

先ほどの下敷きの例で考えると分かりやすいかもしれません。薄い下敷きは簡単に座屈しますが、その裏側に細い棒を貼り付けておくと、ぐにゃりと曲がりにくくなります。補剛材は、これと同じ役割を果たしているのです。

橋の桁の内部や、鋼板の裏側を見ると、こうした補剛材が規則的に取り付けられていることがあります。一見すると地味な部材ですが、薄い鋼板で構成された橋を座屈から守る、重要な役割を担っています。鋼橋の設計では、どこにどれだけの補剛材を配置するかが、桁の安全性を左右する大切な検討事項になります。

鋼部材が持つ強み

ここまで継手や座屈という、鋼ならではの注意点を見てきましたが、鋼部材には設計上の大きな強みもあります。

強度が大きいため、部材の断面を小さくできること。材料が均一で、強度のばらつきが小さいこと。工場で作られるため製作精度が高いこと。そして、後から部材を補強したり、改良したりしやすいこと。これらは、コンクリートにはない鋼ならではの利点です。

特に最後の「補強・改良のしやすさ」は、橋を長く使っていくうえで大きな意味を持ちます。鋼部材は、傷んだ箇所に当て板をしたり、部材を追加したりといった補修がしやすく、維持管理の面でも扱いやすい材料と言えます。

まとめ

この記事では、鋼部材の設計で重要になる「継手」と「座屈」について見てきました。

鋼の橋は部材をつなぎ合わせて作られるため、継手の設計が欠かせません。つなぎ方には、溶接継手、高力ボルト摩擦接合継手、リベット継手の3種類があり、現在は溶接と高力ボルトが主流です。

また、鋼は薄くて強い材料であるがゆえに、圧縮を受けると座屈という現象を起こしやすいという特徴があります。これを防ぐために、補剛材という補強材が取り付けられます。

鋼部材には、断面を小さくできる、製作精度が高い、補強・改良がしやすいといった強みもあります。これらの特徴を理解し、継手や座屈に適切に配慮することが、安全で長持ちする鋼橋を造るための鍵になります。

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