コンクリート橋の点検・補修・補強|劣化のしくみと補修・補強の方法を解説

コンクリート橋 橋梁

コンクリートの橋は、丈夫で耐久性に優れる一方、長い年月のうちに、さまざまな原因で少しずつ傷んでいきます。その傷みを見つけ、原因を見極め、適切に手を打つのが、コンクリート橋の点検・補修・補強です。

ここでは、コンクリート橋に起きる劣化のしくみから、点検で調べること、そして傷みに応じた補修・補強の方法までを見ていきます。

コンクリート橋に起きる変状

コンクリート橋の変状は、いくつかの段階や原因に分けて捉えることができます。

まず、造られた時点ですでに潜んでいる「初期欠陥」があります。コンクリートがうまく詰まらずに生じる豆板(じゃんか。空隙の多いもろい部分)や、内部の空洞などです。これらは、それ自体が弱点になるだけでなく、そこから水や空気が入り込んで、のちの劣化の起点になることもあります。次に、建設後の時間の経過とともに進む「劣化現象」があります。中性化(ちゅうせいか)、塩害、凍害(とうがい)、アルカリ骨材(こつざい)反応などです。さらに、ひび割れや異常な変位といった構造的な変状、そして地震・火災・衝突などによる損傷も加わります。

これらの劣化の要因は、大きく三つに整理できます。造るときの施工不良によるもの、コンクリートの材料そのものに起因するもの、そして橋の置かれた環境によるものです。やっかいなのは、これらの劣化が、初期にはどれも「ひび割れ」という共通した形で現れることです。そのため、ひび割れを見つけても、その原因が何なのかを見極めるには、慎重な判断が必要になります。

コンクリート部材の主な劣化

コンクリート部材に起きる代表的な劣化を、整理すると次のようになります。

劣化事象主な要因どんな現象か
塩害塩化物イオンコンクリートのひび割れや剥離(はくり)、鋼材の断面減少を引き起こす
中性化二酸化炭素コンクリートがアルカリ性を失い、鉄筋の腐食が進む。ひび割れや剥離につながる
アルカリ骨材反応反応性のある骨材骨材がコンクリート中のアルカリ性の水と反応し、異常な膨張やひび割れを起こす
凍害凍結と融解のくり返し水分の凍結・融解で、表面のフレーク状の剥離や微細なひび割れが生じる
床版の疲労大型車の通行輪荷重(りんかじゅう)のくり返しで、床版にひび割れや陥没が生じる

塩害と中性化は、どちらも内部の鉄筋をさびさせ、そのさびがふくらんでコンクリートを押し割る、という点で共通します。もともとコンクリートはアルカリ性で、その性質が鉄筋の表面に保護的な膜をつくり、さびから守っています。ところが、塩分が入り込んだり(塩害)、空気中の二酸化炭素でアルカリ性が失われたり(中性化)すると、この守りが壊れ、鉄筋がさび始めます。塩害は塩分が、中性化は二酸化炭素が引き金になるわけです。アルカリ骨材反応は、骨材とコンクリート内部の水が反応してふくらむ現象で、独特のひび割れを生みます。凍害は寒冷地で、床版の疲労は交通量の多い道路橋で、それぞれ問題になりやすい劣化です。

コンクリート橋の点検——調べること

コンクリート橋の点検では、目に見える部分だけでなく、内部の状態まで含めて、さまざまな項目を調べます。コンクリートは、内部の鉄筋や劣化の進み具合が外からは見えないため、表面に現れたサインと、各種の調査とを組み合わせて、内部で何が起きているかを推し量っていく必要があるのです。

基本となるのは、目視と打音による外観調査です。これに加えて、コンクリートの硬さからおおよその強度を調べる強度調査(リバウンドハンマーという器具を使います)、内部の鉄筋の位置やかぶり(鉄筋を覆うコンクリートの厚み)を調べる配筋・かぶり調査、中性化がどこまで進んでいるかを調べる中性化深さの測定、塩分がどれくらい含まれているかを調べる塩化物イオン量の調査などがあります。配筋やかぶりの状態は、橋の安全性や、これからの劣化の進み方を見通すうえで重要な手がかりになります。さらに、設計や施工の記録を調べることも、原因を探るうえで役立ちます。点検全般の進め方については、別の記事でもまとめています。

【橋の点検とは?上部・下部構造の着目点と点検の進め方を解説】
https://hashiwatashi.com/bridge-inspection-basics/

ひび割れは「制御」する

コンクリートのひび割れは、ただの見た目の問題ではありません。ひび割れから水や塩分が入り込めば、内部の鉄筋の腐食を早めてしまいますし、ひび割れに入った水が凍結と融解をくり返せば、コンクリートの破壊が進んでしまいます。そのため、ひび割れは、放置せずに適切に制御することが大切になります。

ここで、鉄筋の腐食を抑えるうえで効いてくるのが「かぶり」です。鉄筋を覆うコンクリートが厚いほど、外からの水や塩分、二酸化炭素が鉄筋に届きにくくなります。同じ環境にあっても、かぶりが大きいほど、鉄筋の腐食は少なくなります。かぶりのほか、鉄筋の太さや間隔、コンクリートの品質、そして表面が置かれた環境条件も、腐食の進み方を左右します。

PC橋ならではの変状

コンクリート橋のなかでも、PC鋼材で圧縮の力をかけて補強したプレストレストコンクリート橋(PC橋)では、特有の変状が加わります。PC鋼材に沿ったひび割れ、PC鋼材を固定する定着部付近のひび割れ、そしてPC鋼材の突出などです。PC鋼材は橋を支える要であるだけに、その傷みには特別な注意が必要です。とくに、高い張力がかかったPC鋼材は、腐食が進むと前ぶれなく破断するおそれがあり、見えない内部の状態をいかにつかむかが課題になります。PC橋のしくみについては、こちらでくわしく解説しています。

【プレストレストコンクリート橋とは?|コンクリートの弱点を克服するしくみを解説】
https://hashiwatashi.com/prestressed-concrete-bridge-details/

コンクリート部材の補修・補強の方法

点検で見つけた変状に対しては、その内容に応じて補修や補強を行います。代表的な工法を整理します。

区分工法目的・概要
補修ひび割れ補修耐久性を向上させる
補修断面修復欠けたコンクリート断面を、修復材を用いて補う
補修表面被覆(ひふく)表面を被覆材で覆い、劣化因子との接触を断つ
補修表面含浸(がんしん)表面に含浸材を塗り、劣化因子の浸透を防ぐ
補修電気化学的防食内部の鋼材の腐食の進行を抑える
補強プレストレス導入PC鋼材を追加し、部材に生じる応力状態を改善する
補強鋼板接着主桁の曲げ耐荷力を高める
補強連続繊維シート接着主桁の曲げ耐荷力を高める
補強部材上面の増厚(ぞうこう)上面に補強鉄筋を入れ、繊維補強コンクリートを打って耐荷力を高める
補強部材下面の増厚下面に引張補強材を配し、モルタルを吹き付けて耐荷力を高める

補修は、主に耐久性を回復・向上させるための工法です。ひび割れをふさいだり、欠けた断面を埋めたり、表面を覆って劣化の原因を遠ざけたりします。なかでも、表面を覆う表面被覆や、表面に染み込ませる表面含浸は、劣化がひどくなる前に施すことで、傷みを未然に防ぐ「予防的な補修」としても役立ちます。また、電気化学的防食は、電気の力を利用して内部の鉄筋の腐食の進行を抑える、やや特殊な方法です。一方の補強は、主に力学的な性能を回復・向上させるための工法です。鋼板や繊維シートを貼って曲げの強さを高めたり、PC鋼材を追加してコンクリートにかかる力の状態を改善したり、部材の上面や下面を増し厚くして耐荷力を高めたりします。

どの工法を選ぶかは、傷んだ原因や、求められる性能に応じて決めます。その判断にあたっては、安全性の確保はもちろん、補修の効果や耐久性、施工のしやすさ、経済性、周囲の景観との調和(修景)まで、幅広く検討する必要があります。コンクリート橋の補修も、新しく造るときに比べて作業の条件が悪く、時間や費用の制約が大きいという難しさを抱えており、現場ごとの工夫が求められます。こうした考え方は、鋼橋の場合とまったく同じです。鋼橋の点検・補修・補強については、こちらでも解説しています。

【鋼橋の点検・補修・補強とは?|鋼材の損傷の種類と防食・補強の方法を解説】
https://hashiwatashi.com/steel-bridge-maintenance/

まとめ

この記事では、コンクリート橋の点検・補修・補強について、劣化のしくみから点検、補修・補強の方法までを見てきました。要点を振り返ります。

  • コンクリート橋の変状は、初期欠陥に加え、中性化・塩害・凍害・アルカリ骨材反応などの劣化が関わる
  • 劣化の要因は、初期にはどれもひび割れとして現れるため、原因の見極めが重要になる
  • 点検では、外観・強度・配筋やかぶり・中性化深さ・塩化物イオン量などを調べる
  • コンクリートのひび割れは制御が必要で、かぶりが大きいほど鉄筋の腐食は少ない
  • 補修は耐久性、補強は力学的性能の回復・向上を目指し、状況に応じて工法を選ぶ

コンクリートという材料の性質と、造られた経緯、置かれた環境をていねいに読み取ること。その積み重ねが、コンクリート橋を長く健やかに保ち、未来へ引き継いでいく力になります。傷みの多くは、原因をつかんで早めに手を打てば、その進行をやわらげることができるのです。

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