LiDARとは?|光で世界を測るレーザースキャナーのしくみと種類を解説

建築DX

写真の束から3次元を復元するSfMに対して、もう一つの雄と呼ぶべき技術があります。自ら光を放ち、その反射から世界の形を直接測ってしまう——LiDAR(ライダー)、いわゆるレーザースキャナーです。

点群データを生み出す二大手段の一方であり、自動運転車の「目」として、そしてスマートフォンにまで載る身近なセンサーとして、いま急速に存在感を増しています。ここでは、LiDARとは何かという定義から、光で距離を測る原理、載せ方による種類、写真測量にはない二つの切り札、そして土木・橋での活用までを、基礎から整理します。

LiDARとは——光の「やまびこ」で距離を測る

LiDARとは、Light Detection and Ranging(光による検出と測距)の略称です。レーザー光を対象物に向けて発射し、反射して戻ってきた光を検出することで、対象までの距離を測るセンサー技術を指します。測量の現場ではレーザースキャナーとも呼ばれ、電波の代わりに光を使うことから「光のレーダー」と説明されることもあります。

原理は、やまびこと同じです。山に向かって声を出し、返ってくるまでの時間が長いほど、山は遠い。LiDARは、声の代わりにレーザーの光を使います。光の速さは秒速約30万kmと分かっていますから、発射から戻ってくるまでの時間を測れば、「光速×往復時間÷2」で距離が正確に割り出せます。この方式をToF(Time of Flight:光の飛行時間)方式といい、LiDARの主流です。

驚くべきはその速さです。レーザーは、ごく短い光の粒(パルス)として、1秒間に数万〜数百万回も発射されます。鏡などのしくみで光の向きを振りながら(スキャンしながら)連射することで、一点一点の距離と方向が次々と記録され、それが3次元座標をもつ点の集まり——点群データになっていきます。さらに、衛星測位(GNSS)と、機体の傾きを測るIMU(慣性計測装置)を組み合わせれば、車やドローンで動きながら測っても、一点ごとに正確な位置を与えられます。なお、ToFのほかに、光の周波数を連続的に変化させながら照射し、距離と相手の速度を同時に測れるFMCW方式という手法もあり、自動運転向けなどで注目されています。

【点群データとは?|現実を数億の点で写し取る3次元計測のしくみと活用を解説】 https://hashiwatashi.com/point-cloud/

SfMとの対比——「見る」技術と「測る」技術

写真から3次元を計算するSfMと、光で直接測るLiDAR。両者の違いは、「受け身か、自分から行くか」に集約されます。

SfMは、太陽や照明が照らした世界をカメラで撮る、受け身(パッシブ)の技術です。だから光がなければ働けず、模様のない面では手がかりを失います。一方のLiDARは、自ら光を発する能動的(アクティブ)な技術。夜間や暗いトンネル内でも測れますし、真っ白でのっぺりした壁でも、光さえ返ってくれば形が取れます。距離を「計算で推定する」のではなく「直接測る」ので、その場でリアルタイムに点群が得られるのも強みです。

もちろん、弱点も裏返しで存在します。機材は写真測量よりも高価になりがちです。レーザーは色を知らないので、点群に色を付けるには、カメラを併用して写真の色を点に着せてやる必要があります。また、雨や霧の粒は光を散乱させるため天候に弱く、光をほとんど返さない黒い物体や、あらぬ方向へ反射してしまう鏡面・水面は苦手です。

つまり、SfMとLiDARは、強みと弱みがきれいに裏返しの関係にあります。手軽さと色のSfM、確実さと速さのLiDAR。実務で両者が補完関係として使い分けられるのは、この対称性ゆえなのです。

【SfMとは?|写真の束が3Dになるしくみ、写真測量の原理から撮り方までを解説】 https://hashiwatashi.com/sfm-photogrammetry/

載せ方いろいろ——三脚からスマホまで

LiDARの面白さは、「何に載せるか」で性格ががらりと変わることです。代表的なタイプを整理します。

タイプ載せる場所得意な場面
地上型(TLS)三脚に据え置き構造物や狭い範囲を、じっくり高精度に
車載型(MMS)自動車道路とその沿道を、走りながら広く
ドローン搭載型UAV現場単位の地形や構造物を、上空から機動的に
航空レーザー測量有人機(固定翼・回転翼)広域の地形。固定翼は広範囲、回転翼は高密度
グリーンレーザー(ALB)有人機・UAV川や海など水域。水底の地形まで
ハンディ型・スマホ搭載型手持ち屋内や身近な対象を、歩きながら手軽に

三脚に据える地上型は、橋脚や建物のような対象を至近距離からミリ単位で写し取る精密派。車で走りながら測るMMSは道路の台帳づくりや維持管理に、ドローン搭載型は起伏の激しい現場や立入困難地に力を発揮します。有人機による航空レーザー測量は、県土まるごとといった広域の地形把握の主役です。そして近年は、手に持って歩くだけで屋内を点群化できるハンディ型や、スマートフォン搭載型まで登場し、「測る」ことの裾野はかつてなく広がっています。

切り札その1——木の下の地形が見える

LiDARには、写真測量には決してまねのできない切り札が二つあります。一つめが、植生の透過です。

森の上空から写真を撮っても、写るのは木々の頭——樹冠(じゅかん)だけです。葉に隠れた地面の形は、写真には決して写りません。ところがレーザーなら、話が変わります。1発のレーザー光はわずかに広がりながら降りそそぐため、その一部が葉と葉の隙間をすり抜けて、地面まで届くのです。

このとき、1発の光から複数の反射が返ってきます。最初に返ってくるのは樹冠に当たった反射で、ファーストパルスと呼ばれます。最後に返ってくるのは、隙間を抜けて地面に届いた反射——ラストパルスです。ラストパルスだけを選り分ければ、樹木というベールを剥がした、裸の地形が浮かび上がります。木を1本も伐らずに、森の下の地面を測る。防災のための地形把握や、森に眠る遺跡の発見までも可能にした、レーザーならではの芸当です。

ただし万能ではありません。葉が密に茂った広葉樹の森や下草の深い場所では、さすがの光も地面まで届かないことがあります。それでも、「上から見えないものを測れる」ことの価値は、計り知れません。

切り札その2——水の底まで測るグリーンレーザー

二つめの切り札が、水底の計測です。

ふつうのLiDARが使う近赤外の光は、水面でほぼ反射してしまい、水の中には入れません。ところが、緑色の光(波長532ナノメートル)は、水を透過する性質を持っています。これを利用したのが、グリーンレーザー、正式には航空レーザー測深(ALB)と呼ばれる技術です。

しくみは巧妙です。機体から、近赤外と緑の2種類のレーザーを同時に照射します。近赤外は水面で反射して返り、緑は水中を進んで水底で反射して返る。この二つの反射の時間差が、そのまま水深になるのです。人や船が近づけない浅瀬や岩場でも、上空からひとまたぎ。川なら、陸の堤防から水中の川底まで、ワンフライトで一体の3次元地形として測れてしまいます。

限界は、水の濁りです。測れる深さは水の透明度に左右され、目安は透明度の1.5〜2倍、おおむね水深15m前後まで。精度も、水深10mで誤差30cm程度と、陸上のレーザー計測よりは粗くなります。それでも、洪水の予測に欠かせない川底の形や、橋脚まわりの洗掘(せんくつ:流れが川底を掘る現象)の把握など、「水の下」を面的に測れることの意義は、水と闘ってきた土木にとって革命的でした。橋を預かる立場からいえば、増水のたびに気をもむ橋脚の足元を、潜水士に頼らず面でつかめる時代が近づいているのです。

土木と橋の現場で——そして日常へ

土木の現場では、LiDARはすでに主力機材です。i-Constructionでは、地上型レーザースキャナーによる出来形管理やドローン搭載レーザーによる測量が制度として整い、公共測量のマニュアルも整備されています。県土をまるごと点群化するような広域計測は航空レーザーの独壇場ですし、橋の世界でも、桁下や狭あい部の形状把握、変位の監視など、近づきにくい場所を光で測る場面が増えています。

【i-Constructionとは?|建設現場の生産性革命、ICT施工からオートメーション化までを解説】 https://hashiwatashi.com/i-construction/

そして、LiDARの普及を後押しする意外な追い風が、自動運転です。周囲の車や歩行者を瞬時に立体でとらえるセンサーとして、LiDARは自動運転車の「目」の座を占めつつあり、量産によるコスト低下と小型化が急速に進んでいます。その恩恵は建設分野にも波及し、かつて何千万円もした計測が、手の届く道具になってきました。スマートフォンに載る時代です。光で世界を測る技術は、専門家の独占物から、日常の道具へと降りてきています。

【橋の維持管理と想像力|前兆を読み、リスクを見すえる予防保全の考え方】 https://hashiwatashi.com/bridge-maintenance-imagination/

まとめ

この記事では、LiDARの基礎を整理しました。

LiDARとは、レーザー光を放ち、反射が返るまでの時間から距離を直接測る技術です。毎秒数万〜数百万発のパルスとスキャンのしくみ、そしてGNSS・IMUとの組み合わせによって、静止画ならぬ「静止点群」から移動計測まで、多彩な載せ方で世界を写し取ります。受け身のSfMと能動のLiDARは強み弱みが裏返しの補完関係にあり、さらにLiDARには、木の下の地形を測る植生透過と、水の底を測るグリーンレーザーという、光ならではの二つの切り札があります。

見えないものを、測れるものに変える。樹冠の下も、水面の下も、夜の闇の中も。LiDARの歩みは、「測れない場所」を一つずつ消していく歩みでした。橋の点検で手の届かない場所に光を当てるとき、その一筋のレーザーには、そんな技術史が凝縮されているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました