ICT・AIが変える橋づくり|設計・施工・維持管理の最前線

ICT Uncategorized

はじめに

ここまで、橋をどう造るかを見てきました。実は、その「造り方」や「支え方」そのものが、いま大きく変わりつつあります。鍵となっているのが、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)です。

設計の図面が3次元になり、点検にドローンが飛び、集めたデータをAIが読み解く——少し前なら未来の話に聞こえたことが、橋づくりの現場で現実になり始めています。今回は、橋の設計・施工・維持管理に広がるICTとAIの今と、これからを見ていきます。

国の取り組み:i-Construction と i-Bridge

この流れを後押ししているのが、国土交通省の取り組みです。

代表的なのが、2016年に始まったi-Construction(アイ・コンストラクション)です。測量・調査から設計、施工、検査、維持管理まで、建設のあらゆる工程でICTを活用し、生産性と安全性を高めようという取り組みです。近年は、施工の自動化やデータ連携をさらに進めるi-Construction 2.0へと発展しています。橋梁の分野に特化したi-Bridge(アイ・ブリッジ)という取り組みも進められています。

人手不足が課題となる中で、限られた人数でも安全に、質の高い橋を造り、長く守っていく——その実現に向けて、ICTの活用が国を挙げて推し進められているのです。

設計が3次元になる:BIM/CIM

その中心にあるのが、BIM/CIM(ビム・シム)と呼ばれる、3次元モデルを使った設計の考え方です。

これまでの平面の図面に代わって、コンピュータ上に橋を3次元で組み立てていきます。立体で見られると、部材どうしがぶつかっていないか(干渉していないか)を細かく確認でき、周りの構造物との位置関係も反映しやすくなります。さらに、「あとで点検や補修がしやすいか」といった維持管理の配慮を、設計の段階から織り込めるのも大きな利点です。公共工事では、こうしたBIM/CIMの活用が原則とされる方向へと進んでいます。

施工と検査が変わる

ものを造る現場でも、ICTの活用が広がっています。

たとえば鋼橋では、工場製作にロボットを取り入れたり、組み立て手順をコンピュータ上でシミュレーションしたりすることで、生産性を高める工夫が進んでいます。また、部材の規格を標準化し、工場であらかじめ造るプレキャスト製品やプレハブ鉄筋を活用することでも、現場の負担を減らせます。

検査や出来形(できがた)の管理にも、新しい技術が使われています。レーザースキャナで構造物を立体的に測ったり、自動で測量機がねらいを追う自動追尾トータルステーションを使ったり、各種のセンサやモニタカメラで、人の目が届きにくい死角の作業を安全に見守ったり——こうした技術が、現場の精度と安全を支えています。

点検・維持管理とドローン、AI

ICTがとりわけ大きな力を発揮しているのが、完成後の点検・維持管理の場面です。

橋には、高い橋脚の上や、桁の裏側、川の上など、人が近づいて確かめるのが難しい場所がたくさんあります。こうした場所の点検に、ドローンを飛ばして撮影する取り組みが広がってきました。点検の現場に立つ立場からすると、これまで足場を組まなければ見られなかった箇所を、短時間で安全に確認できるのは、大きな前進です。

集めた大量の画像やデータは、AIの出番でもあります。ひび割れのような損傷を、過去の膨大なデータから学習(ディープラーニング)したAIが見つけ出す——そうした技術の開発も進んでいます。多くのデータを集めて分析するほど、橋の状態をより的確につかめるようになっていきます。橋の老朽化という大きな課題については、橋梁の基本を扱った記事でも触れています。

【橋梁とは何か?定義・役割・種類を解説】
https://hashiwatashi.com/what-is-bridge/

それでも、人にしかできないことがある

ここまで読むと、いずれAIがすべてを引き受けてくれるように思えるかもしれません。けれども、現場の実感としても、技術の側から見ても、そう単純ではありません。

AIが得意とするのは、大量のデータからパターンを見つけることです。一方で、これまでにない「例外」や、想定していなかった出来事への対応は、いまのAIが苦手とするところだとされています。とくに、地震や水害といった非常時・災害時には、刻々と変わる現場の状況を読み、その場で判断することが求められます。こうした場面では、経験を積んだ人の目と判断が、やはり欠かせません。

橋づくりでは、構造に余裕を持たせるリダンダンシー(冗長性)、しなやかに回復するレジリエンス、想定外にも崩れにくいロバスト性(頑健さ)といった考え方が大切にされています。これらをどう設計に活かすか、そして人の見落とし(ヒューマンエラー)をどう防ぐか——ここでも、技術は人の判断を助ける道具であって、人に取って代わるものではない、という関係が見えてきます。

ICTやAIは、橋づくりを確実に変えていきます。けれど、その力を本当に活かせるかどうかは、集めたデータをどう読み、どう設計や維持管理に反映させるか——つまり、それを扱う人の側にかかっています。

まとめ

この記事では、橋の設計・施工・維持管理に広がるICTとAIについて見てきました。ポイントを整理します。

  • 国土交通省は、i-Constructionやi-Bridgeといった取り組みで、橋づくりへのICT活用を進めている
  • BIM/CIMによる3次元設計で、干渉チェックや維持管理の配慮を設計段階から行えるようになってきた
  • 施工・検査ではロボットやレーザースキャナ、各種センサが、点検ではドローンやAIが活躍している
  • 一方で、例外や非常時への対応など、人の経験と判断にしかできないことも多く残されている
  • 技術と人が補い合うことで、橋はより安全に、長く使えるものになっていく

橋づくりの最前線では、伝統的な土木の知恵と、新しいデジタル技術が、少しずつ手を取り合い始めています。その両方を見渡せることが、これからの橋を支える力になっていくはずです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました