IMUとは?|自分の動きを感じ続ける慣性計測装置のしくみとGNSSとの名コンビを解説

IMUとは? 建築DX

目を閉じていても、エレベーターが上がり始めた瞬間は分かります。電車が発進すれば体が後ろに引かれ、カーブでは横に振られる。外の景色を見なくても、人は自分の動きを感じ取れる——内耳の三半規管と耳石が、回転と加速を捉えているからです。

この「動きの感覚」を機械にしたものが、IMU(アイエムユー:慣性計測装置)です。LiDARでもGNSSでもRTKでも、「GNSSとIMUを組み合わせて」と名前だけ登場し続けてきた、計測の影の主役。ここでは、IMUとは何かという定義から、中身のセンサーのしくみ、泣きどころのドリフト、GNSSとの名コンビぶり、そしてドローンや計測の現場での働きまでを、基礎から整理します。

IMUとは——外の何にも頼らない「動きの感覚」

IMUとは、Inertial Measurement Unit(慣性計測装置)の略称で、物体の3次元の動き——回転と加速——を検出するセンサーの箱です。

最大の特徴は、外部の何にも頼らないことです。GNSSは衛星の電波が、カメラは光が、届かなければ働けません。しかしIMUは、自分自身に生じる慣性(かんせい:動きの変化に抗う性質)だけを感じ取るので、トンネルの中でも、水の中でも、真っ暗闇でも、休まず動きを測り続けられます。冒頭の「目を閉じていても分かる」感覚そのもの。この独立性こそが、IMUの存在意義です。

中身は二種類のセンサー——6つの目盛りで動きを捉える

IMUの中身は、基本的に二種類のセンサーの組み合わせです。

一つは、加速度センサー。前後・左右・上下という直交する3方向について、速度の変化(加速度)を測ります。しくみは意外なほど素朴で、ばねで支えられた微小なおもり(質量体)が入っており、加速するとおもりがわずかに取り残されて変位する。その変位を電気的に読み取ることで、どの向きにどれだけ加速したかが分かります。大切なのは、静止しているときにも重力という加速度を感じている点です。重力がどちらに掛かっているかが分かる——つまり、加速度センサーは「どちらが下か」を知っており、傾きの検出にも使えるのです。

もう一つは、ジャイロセンサー。機体の回転の速さ(角速度)を、やはり3軸で測ります。ロール(横揺れ:左右への傾き)、ピッチ(縦揺れ:前後への傾き)、ヨー(首振り:向きの変化)。飛行機やドローンの姿勢を表すおなじみの3軸です。小型のものは、微細な振動子が回転を受けたときに生じる力を検出するMEMS(メムス)方式が主流で、より高い精度が要る航空機などでは、光ファイバーのコイルを回る光の位相差から回転を検出する光ファイバージャイロ(FOG)が使われます。

加速度3軸+角速度3軸で、あわせて6つの計測値。IMUが「6軸センサー」とも呼ばれるゆえんです。これに、方位の基準となる地磁気センサー3軸を加えた「9軸」の構成もあります。

慣性航法——外を見ずに、自分の位置を知る

IMUの計測値を積み重ねると、驚くべきことができます。外部の情報を一切使わずに、自分の位置を割り出せるのです。

理屈はこうです。角速度を時間で積み重ねれば(積分すれば)、機体がどれだけ回転したか——つまり今どちらを向いているかが分かります。加速度を積分すれば速度が、速度をさらに積分すれば移動距離が分かる。出発点の位置と向きさえ分かっていれば、あとは「どちらへ、どれだけ動いたか」を足し算し続けることで、現在位置を推定できるわけです。

これが慣性航法(INS)と呼ばれる技術で、その歴史は衛星測位よりずっと古いものです。電波を出せば居場所が知れてしまう潜水艦、地上の支援なしに飛び続ける長距離航空機、そして宇宙へ向かうロケット。「外を見られない・外に頼れない」乗り物たちの位置把握を、IMUは半世紀以上にわたって支えてきました。

泣きどころ——ドリフトという宿命

ただし、この足し算には宿命的な弱点があります。ドリフトです。

センサーの計測には、ごくわずかな誤差が必ず含まれます。一回分は取るに足らない誤差でも、積分とは足し算の繰り返し。小さなずれが雪だるま式に積み上がり、時間がたつほど推定位置は真の位置からじわじわと流されて(ドリフトして)いきます。とりわけ、重力を手がかりにできないヨー方向(水平面内の向き)は補正の頼りが少なく、ずれがたまりやすい方向です。

つまりIMUは、短い時間なら極めて頼れるのに、長い時間はもたない。瞬発力はあるがスタミナがない——そんな性格のセンサーなのです。だからこそ、定期的に「答え合わせ」をしてくれる相棒が要ります。

GNSSとの名コンビ——弱点が裏返しの二人

その相棒こそが、GNSSです。二つを並べてみると、弱点がみごとに裏返しになっていることが分かります。

項目GNSSIMU
分かるもの地球上の絶対的な位置自分の動き(回転・加速)という相対的な変化
更新の速さ毎秒数回〜十回程度毎秒数百回の高速更新
途切れトンネル・橋の下・ビル陰で途切れる外部に頼らないため途切れない
誤差の性質時間がたっても増えない時間とともに蓄積する(ドリフト)
コンビでの役割ときどき正確な位置で「答え合わせ」その合間を高速・連続で「つなぐ」

GNSSは、正確な絶対位置をくれる代わりに、更新はせいぜい毎秒数回〜十回程度で、空が見えなければ沈黙します。IMUは、毎秒数百回という高頻度で動きを捉え続け、決して途切れない代わりに、放っておけばドリフトで流されていく。

そこで、二つの出力を計算で賢く融合させます。GNSSの位置が得られるたびに、IMUの積み上げた推定を答え合わせして、たまった誤差をリセットする。GNSSが途切れた区間は、直前までの答え合わせで整えられたIMUが、高頻度の推定でつないでいく。これがGNSS/IMU複合航法で、互いの短所を相手の長所が埋め合う、教科書のような相互補完の関係です。橋の下をくぐるMMS計測車も、ビル陰を飛ぶドローンも、この名コンビに支えられています。

【GNSSとは?|GPSとの違いから、センチメートルで測るしくみまでを解説】 https://hashiwatashi.com/gnss/

MEMS革命——ロケットの技術が、ポケットの中へ

かつてIMUは、軍用機やロケットに積まれる、大型で極めて高価な精密機器でした。それが今や、誰のポケットにも入っています。転機は、MEMS——半導体の微細加工技術で機械部品ごとチップ化する技術でした。

スマートフォンを回すと画面がついてくるのは、中のIMUが傾きを感じているから。歩数計が歩みを数え、カメラの手ぶれ補正が震えを打ち消し、ゲーム機のコントローラーが振りを読み取る。どれも小さなIMUの仕事です。バイクでは、車体の傾きをIMUで捉えて、カーブ中のブレーキ制御を賢くする使い方まで広がっています。この量産効果でセンサーは劇的に安く小さくなり、その恩恵が、ドローンや計測の世界にもそのまま流れ込みました。

ドローンと計測の現場で——姿勢の番人、座標の相棒

ドローンにとって、IMUは姿勢制御の心臓部です。空中でホバリングする機体は、風に絶えず揺さぶられています。IMUが毎秒何百回も傾きと回転を検知し、フライトコントローラーが瞬時に各モーターの回転数を調整する——その繰り返しが、あの「ピタリと空中に静止する」飛行を生んでいます。パイロットが操縦に集中できるのは、IMUという番人が姿勢を守り続けてくれているからです。

計測の世界では、IMUは「座標の相棒」として働きます。ドローン搭載のレーザースキャナーを思い出してください。毎秒数十万発のレーザーの一発一発に座標を与えるには、発射した瞬間の機体の位置だけでなく、姿勢——どちらを向き、どれだけ傾いていたか——が不可欠です。位置はGNSS/RTKが、姿勢と合間のつなぎはIMUが受け持つ。GNSS+IMU+レーザーの三点セットで、初めて「動きながら測る」が成立するのです。写真測量でも、写真一枚一枚の撮影姿勢の手がかりとして、IMUの記録が計算を助けています。

【SfMとは?|写真の束が3Dになるしくみ、写真測量の原理から撮り方までを解説】 https://hashiwatashi.com/sfm-photogrammetry/

そして、橋そのものの見守りにも、慣性センサーは静かに使われています。加速度センサーは重力の向き——つまり傾きを知っているのでしたね。この性質を活かして、橋脚や桁に据えたセンサーで構造物の傾斜を常時計測したり、地震のときにどれだけ傾いたかを記録したりする使い方があります。動くものの姿勢を守る技術が、動かないはずのものの異変を捉える番人にもなる。同じ原理の、二つの顔です。

【LiDARとは?|光で世界を測るレーザースキャナーのしくみと種類を解説】 https://hashiwatashi.com/lidar/

【RTKとは?|動きながらセンチメートルで測る測位のしくみとPPKとの使い分けを解説】 https://hashiwatashi.com/rtk/

まとめ

この記事では、IMUの基礎を整理しました。

IMUとは、加速度センサー3軸とジャイロセンサー3軸で、自分の動き——回転と加速——を感じ続ける慣性計測装置です。外部の何にも頼らない独立性を武器に、潜水艦やロケットの慣性航法を支えてきた一方、積分に宿るドリフトという宿命を抱えています。その弱点を、絶対位置をくれるGNSSが答え合わせで補い、GNSSの途切れをIMUの高頻度な推定がつなぐ——弱点が裏返しの名コンビが、MMSにもドローンにも宿っています。

宇宙を飛ぶロケットを導いた技術が、MEMS革命を経て、いまはポケットの中で画面を回し、現場の空でドローンの姿勢を守っている。GNSSという「空からのものさし」と、IMUという「内なる感覚」。計測の世界は、この外と内の二人三脚で、動きながら測る時代を走っているのです。

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