耐震設計の考え方|地震に強い橋を造るための3つの考え方

橋梁の基礎

はじめに

日本は地震大国です。橋を設計するうえで、地震への備えは避けて通れないテーマです。大きな地震が発生したとき、橋が崩壊してしまえば、人命に関わるだけでなく、復旧や救援の道も断たれてしまいます。

そのため、日本の橋づくりでは、地震に対する設計が特に重要視されています。橋を地震に強くするための考え方には、大きく分けて「耐震設計」「制震設計(せいしんせっけい)」「免震設計(めんしんせっけい)」の3つがあります。

この記事では、地震に対する橋の設計について、これら3つの考え方と、設計で前提となる地震動のレベル、そして地盤条件への配慮を見ていきます。橋に求められる性能の全体像については、以下の記事で整理しています。

【橋に期待される性能|橋に求められる6つの性能を解説】 https://hashiwatashi.com/bridge-required-performance/

2つのレベルの地震動

地震に対する設計を考えるとき、最初に意識すべきなのが「どの程度の地震に備えるか」という問題です。橋の設計では、性質の異なる2つのレベルの地震動を想定して、それぞれに対する備えを考えます。

「レベル1地震動」は、橋の使用期間中に発生する確率が比較的高い、中程度の強さの地震動です。橋を使っている間に、何度か遭遇するかもしれない地震、というイメージです。このレベルの地震に対しては、橋がほとんど被害を受けず、引き続き使い続けられることが求められます。

「レベル2地震動」は、橋を建てるその場所で考えられる、最大級の強さを持つ地震動です。発生する確率は低いものの、いつか遭遇する可能性のある大きな地震、というイメージです。このレベルの地震に対しては、橋が多少の損傷を受けることは許容しつつも、致命的な破壊が起きないこと、つまり橋が崩壊して人命が失われる事態を絶対に避けることが求められます。

この「2段階で備える」という考え方は、地震大国・日本の橋づくりが、長年の経験から築き上げてきた知恵です。日常的な地震には平常運転で耐え、巨大地震には命を守ることを最優先にする、というメリハリのある設計思想と言えます。

考え方1:耐震設計

最も基本となるのが「耐震設計」です。これは、橋自身の構造で地震の力に真正面から耐える、という考え方です。

橋脚や橋台、桁といった構造部材を、地震の力に耐えられるよう頑丈に設計します。地震が来ても橋が壊れないように、部材を強くして力を受け止める、というのが耐震設計の基本です。

このとき、特に気を配るのが、地震の力が橋の特定の場所に集中しないようにすることです。一部分にだけ大きな変形や応力集中、ねじれが生じると、そこから橋全体の崩壊につながりかねません。橋全体でバランスよく地震の力を受け止められる構造にすることが、耐震設計の要となります。

また、橋が地震で大きく揺さぶられたときには、ある程度の変形は避けられません。そこで、部材が脆く折れるのではなく、ねばり強く変形しながら力を吸収していけるような工夫もなされます。じん性、つまり粘り強さを持たせることが、耐震設計では大切にされます。

考え方2:免震設計

次に「免震設計」です。これは、地震の揺れを橋に伝わりにくくする、という考え方です。

橋桁と橋脚の間には、橋桁を支える「支承(ししょう)」という部材があります。免震設計では、この支承に特殊な仕組みを持たせて、地震の揺れを橋桁にダイレクトに伝えないようにします。

地震の揺れには、特定のリズム(周期)があります。橋もそれ自体が持つ揺れやすいリズムを持っており、両者のリズムが近いと、揺れが大きく増幅されてしまいます。免震支承を使うと、橋全体の揺れのリズムを長く調整することができます。地震のリズムとずらすことで、揺れの増幅を抑え、橋にかかる力を小さくする、という発想です。

ブランコをイメージすると分かりやすいかもしれません。ブランコは、押すタイミングと揺れのリズムが合うと、どんどん大きく揺れます。逆にリズムが合わなければ、押しても揺れは大きくなりません。免震設計は、地震という押す力と、橋の揺れのリズムを意図的にずらすことで、揺れの増幅を防ぐ仕組みなのです。

考え方3:制震設計

そして「制震設計」です。これは、地震のエネルギーを吸収する装置を取り付けて、揺れを抑える、という考え方です。

制震設計では、橋に「ダンパー」と呼ばれるエネルギー吸収装置を組み込みます。ダンパーは、橋が揺れる動きを受け止めて、そのエネルギーを熱や変形といった形に変えて消費します。揺れのエネルギーを橋の構造そのものに溜め込まず、ダンパーが代わりに吸収してくれるイメージです。

車のサスペンションにあるショックアブソーバーが、似た役割を果たしています。道路の凹凸を通過するときの揺れを、車体ではなくショックアブソーバーが吸収することで、乗員に揺れを伝えにくくしています。橋の制震ダンパーも、地震の揺れを吸収して、橋の構造への負担を軽くする働きをします。

免震設計と制震設計は、しばしば組み合わせて使われます。免震支承で揺れのリズムをずらし、同時に制震ダンパーで揺れのエネルギーを吸収する。両者を併用することで、より効果的に地震の影響を抑えられます。

地盤条件への配慮

地震に対する設計では、橋が建つ場所の地盤条件にも十分な注意が必要です。

地盤がしっかりした硬い岩盤であれば、地震の揺れは比較的伝わりやすいものの、地盤自体は安定しています。一方、軟らかい地盤や、地下水位の高い緩い砂地盤などでは、地震時に独特の挙動を示すことがあります。

特に注意すべきなのが「液状化(えきじょうか)」という現象です。水を多く含んだ砂地盤が、強い揺れによって液体のように振る舞ってしまう現象です。液状化が起きると、地盤が橋を支える力を失い、橋脚や橋台が傾いたり沈んだりするおそれがあります。

また、谷を渡る橋や長い連続橋では、複数の橋脚が異なる地盤の上に立つことになります。地盤の硬さが場所によって違うと、地震時の揺れ方も場所によって変わり、橋全体に複雑な力がかかります。こうした条件下では、それぞれの地点の地盤を丁寧に調べたうえで、橋全体のバランスを考えた設計が求められます。

補修設計の現場でも、過去の地震で被害を受けた橋を扱うとき、その橋がどのような地盤の上に立っているかを把握することは欠かせません。地盤の特性と地震の揺れ方を結びつけて理解することが、橋を地震から守る出発点になります。

まとめ

この記事では、地震に対する橋の設計について見てきました。

橋の設計では、レベル1地震動とレベル2地震動という、性質の異なる2つの地震動を想定し、それぞれに対する備えを考えます。地震に対する設計の考え方には、橋自身の構造で耐える「耐震設計」、揺れのリズムをずらして増幅を抑える「免震設計」、エネルギー吸収装置で揺れを抑える「制震設計」の3つがあります。

また、橋が建つ場所の地盤条件、特に液状化のリスクには十分な注意が必要です。地盤と地震の揺れ方を結びつけて考えることが、地震に強い橋づくりにつながります。

地震という避けられない自然現象に対して、橋づくりは知恵を重ねてきました。3つの考え方を組み合わせ、地盤条件に応じた工夫を凝らすことで、橋は地震とともに生きる構造物として進化を続けています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました