鋼橋の架設工法とは?6つの代表工法と架設用機械の関係

鋼橋の架設工法 橋梁の基礎

橋づくりの現場で、工場から運ばれてきた鋼の部材を、所定の位置に組み立てていく作業を「架設(かせつ)」と呼びます。製作されたパーツを、川や谷、道路や線路をまたいだ高い場所へ、安全に、正確に据えていく——架設は、鋼橋づくりのクライマックスとも言える工程です。

ただ、その架け方は一通りではありません。架設の方法は、橋を架ける場所の地形条件や、橋の種類によって大きく変わります。そしてもう一つ、見落とされがちですが大切なのが、架設用機械との関係です。どんな工法も、それを支える機械があって初めて成り立ちます。架設技術の進歩は、工法と機械の開発がいわば「二人三脚」で進んできた歴史でもあります。

ここでは、鋼橋の代表的な六つの架設工法を、それぞれがどんな場所で、どんな機械とともに使われるのかという視点から見ていきます。なお、現地での組立から床版までの施工全体の流れは、別の記事でまとめています。

【鋼橋の施工で大切なこと|輸送・架設・現場溶接の着目点】 https://hashiwatashi.com/steel-bridge-construction/

架設工法は何で決まる?

鋼橋の架設工法を選ぶとき、技術者がまず見るのは「その場所がどんな地形か」です。橋の下に平らな地面が広がっているのか、深い谷なのか、水が流れているのか、あるいは下を道路や線路が通っていて工事中も使い続けなければならないのか。条件によって、使える工法は自然と絞られていきます。

次に効いてくるのが「橋の種類」です。一つの支間(しかん。橋脚と橋脚の間のこと)ごとに独立した単純桁なのか、いくつもの支間が連続してつながった連続桁や連続トラスなのかで、架け方の考え方が変わります。

ちなみに、ひとくちに橋と言っても、道路橋と鉄道橋では橋の上面(橋床)の形が違います。道路橋は路面が舗装されているのに対し、鉄道橋ではレールを受ける枕木(まくらぎ)が並びます。架けるものの性格を踏まえて、最適な工法が選ばれていきます。

それでは、代表的な六つの工法を一つずつ見ていきましょう。

ベント工法——仮設の支柱で支える、最も基本的な方法

最も基本的で、広く使われているのがベント工法です。「ベント」とは、橋脚と橋脚の間に仮に立てる鋼製の支柱のことです。この仮設の支柱を「仮の支点」として、移動式クレーンで主桁を吊り上げ、その上に据えていきます。桁どうしの連結作業が終わったら、役目を終えたベントは解体・撤去されます。

短いスパンの桁であれば、トラッククレーンやクローラークレーンといった移動式クレーンで手際よく架けられます。設備が比較的シンプルで、確実に施工しやすいことから、条件が許せばまず検討される、いわば基本の工法です。ただし、ベント工法が使えるのは、橋の下にベントを立てられる平らで安定した地盤があり、桁下(けたした)の空間が使える場合に限られます。裏を返せば、深い谷や流れの速い川、下を通行止めにできない道路や線路の上では、別の工法を考えることになります。地面という「足場」が使えるかどうかが、最初の分かれ道になるわけです。

送り出し工法——桁を前へ「押し出す」

橋の下が使えないときに登場するのが送り出し工法です。橋を架ける場所の手前に組立ヤードを設けて、そこで橋桁を組み立てておきます。そして、橋桁の先端に「手延べ機(てのべき)」と呼ばれる軽い仮設の桁を取り付け、後ろからじわじわと前へ送り出していきます。

ここでのポイントは、送り出している間、橋桁が自分自身の力で前へ張り出した状態を支えなければならないことです。先端に重い本設の桁ではなく、あえて軽い手延べ機をつけるのは、張り出したときの負担を少しでも減らすための工夫です。下を道路や線路、川が横切っていて、その通行を止められない場所で力を発揮します。地面に支えを立てられなくても、手前から「送り込む」ことで橋を架けられる、というわけです。

片持ち式工法——既設の桁から張り出す

すでに架け終えた橋桁を足がかりにして、次の支間に向かって少しずつ桁を継ぎ足し、片持ち(一方だけで支える状態)で張り出していくのが片持ち式工法です。桁の先端に小型のクレーンを載せ、新しい部材を吊り上げては継いでいく、という作業を繰り返して前へ進みます。

この工法は、桁がいくつもつながった連続桁や連続トラスの架設に向いています。また、桁の高さが高い橋や、桁下の空間を自由に使えない場合にも適しています。下に支えを立てるのではなく、橋そのものを足場として前へ伸びていく点が、送り出し工法とはまた違った特徴です。橋自身の強さを利用しながら、慎重に張り出しのつり合いをとって進めていく工法です。

ケーブル式工法——深い谷を「吊って」渡す

橋の下が深い谷や流水部で、ベントを立てることが難しい。けれども両岸には鉄塔(てっとう)やアンカー(ケーブルを固定する装置)を設置できる。そんな条件で選ばれるのがケーブル式工法です。

両岸に立てた鉄塔の間にケーブルを張り渡し、そのケーブルから橋桁を吊り下げながら、空中で架設していきます。地面に頼らず、空中に張った一本の「道」を使って部材を運び、据えていくイメージです。ベントも組めず、手前から送り出すこともできない深い谷をまたぐ山間部の橋などで、その実力が活きてきます。

一括架設工法——大ブロックを「丸ごと」据える

橋桁を細かいパーツに分けて少しずつ架けるのではなく、大きなブロックにまとめて一気に据えてしまうのが一括架設工法です。

工場や架設現場の近くで、橋桁を大きなブロックとして組み立てておき(地組)、それを台船(だいせん。平らな運搬用の船)に載せます。台船を架設位置まで曳航(えいこう)し、所定の場所で位置を決めたら、そのまま一括して据え付けます。海上や港湾の大規模な橋で採用されることが多く、現場での高所作業を減らせる利点があります。大きなブロックを正確な位置に据えるには、起重機船(きじゅうきせん)などの大型機械の力が欠かせません。陸の上の作業を、できるだけ安定した場所に移しておく、という発想の工法です。

架設桁工法——仮設のトラスを足場にする

架設桁(かせつげた)工法は、本設の橋桁を架ける前に、まず仮設のトラス(架設桁)を支間に架け渡しておく方法です。この仮設のトラスを「動く足場」のように使い、そこから本設の橋桁を一つずつ吊り込んで据えていきます。

下にベントを立てられない場所や、高い安定度が求められる場面で用いられます。仮設の桁を先に通しておくことで、その後の桁の据え付けを安定して進められるのが利点です。仮設の構造物が、本設の橋を架けるための「縁の下の力持ち」として働く、という点では、ベント工法と発想が通じ合っています。

どの工法を選ぶ?六工法の早見表

ここまでの六工法を、向いている場所と主に使われる機械で一覧にまとめます。

工法向いている場所・条件主な架設用機械
ベント工法桁下に安定した地盤と空間がある/短〜中スパン移動式クレーン(トラック・クローラー)
送り出し工法下を道路・線路・川が横切り、通行を止められない手延べ機
片持ち式工法深い谷や桁下が使えない場所/連続桁・連続トラス桁先端の小型クレーン
ケーブル式工法深い谷や流水部で、両岸に鉄塔・アンカーを築ける鉄塔とケーブル
一括架設工法海上や港湾の大規模な橋台船・起重機船
架設桁工法ベントが立てられず、高い安定度が求められる仮設の架設桁(トラス)

こうして並べてみると、「桁下の地面が使えるか」「下に何があるか」「橋がどれだけ大きいか」といった現場の条件が、工法選びを大きく左右していることがよく分かります。

工法と架設用機械は「二人三脚」

ここまで見てきて気づくのは、それぞれの工法が、特定の架設用機械とセットで成り立っているということです。ベント工法には移動式クレーン、送り出し工法には手延べ機、ケーブル式工法には鉄塔とケーブル、一括架設工法には台船や起重機船、架設桁工法には仮設のトラス。架設工法とは、いわば「機械や仮設構造物の使い方の設計」でもあるのです。

だからこそ、架設技術の進歩は、工法の工夫と機械の開発が両輪となって進んできました。より大きく、より精密に部材を扱える機械が登場すれば、これまで架けられなかった場所にも橋を架けられるようになります。長い支間を一気にまたぐ橋や、厳しい地形に挑む橋が次々と実現してきた背景には、この二人三脚の積み重ねがあります。

また、実際の現場では、一つの橋をまるごと同じ工法で架けるとは限りません。たとえば、地面が使える区間はベント工法で手早く架け、深い谷をまたぐ区間だけ片持ち式工法に切り替える、といったように、場所ごとに最適な工法を組み合わせることもあります。一本の橋の架設計画は、現場の条件を細かく読み解きながら組み立てられる、いわばオーダーメイドの段取りなのです。

まとめ——「どう架けるか」は現場が決める

鋼橋の架設工法には、ベント工法、送り出し工法、片持ち式工法、ケーブル式工法、一括架設工法、架設桁工法といった代表的な方法があります。どれを選ぶかは、橋を架ける場所の地形条件と橋の種類、そして使える架設用機械によって決まります。

同じ「橋を架ける」でも、平地と深い谷、陸の上と海の上では、まったく違う段取りが必要になります。そして架設の途中の橋は、完成した姿とは別の、不安定で刻々と変化する状態にあります。その一瞬一瞬を安全に乗り越えるために、現場の条件を読み解き、最適な工法を選ぶ——架け方を考えることは、橋の安全を考えることそのものでもあります。

【橋を架けるときの考え方|刻々と変化する構造と現場の安全】 https://hashiwatashi.com/bridge-erection-approach/

鋼橋とコンクリート橋では、材料の性質が違えば、施工の勘どころも変わります。コンクリート橋の施工で何に気をつけるのかは、別の記事でまとめています。

【コンクリート橋の施工|品質を決める生コン管理ときめ細やかな段取り】 https://hashiwatashi.com/concrete-bridge-construction/

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