コンクリート橋の架設工法とは?場所打ちとプレキャスト、6つの工法を解説

コンクリート橋の架設方法 橋梁の基礎

前回は、鋼橋の架設工法を六つにわけて見てきました。

【鋼橋の架設工法とは?6つの代表工法と架設用機械の関係】
https://hashiwatashi.com/steel-bridge-erection-methods/

今回は、その「コンクリート橋」版です。製作された部材を組み立てる鋼橋に対し、コンクリート橋の架設には、コンクリートならではの考え方があります。

そのいちばんの分かれ道は、「橋桁を現場で造るのか、それとも工場やヤードで造って運んでくるのか」という点です。この違いが、コンクリート橋の架設工法を大きく二つのグループに分けています。ここでは、その二つのグループと、それぞれに属する代表的な六つの工法を見ていきます。

大きく二つ——場所打ち工法とプレキャスト工法

コンクリート橋の架設工法は、まず「場所打ち工法」と「プレキャスト工法」の二つに大別されます。

場所打ち工法は、橋を架ける現場でコンクリートを打設し、その場で橋桁を造り上げていく方法です。一方のプレキャスト工法は、橋桁の部材を工場や現場近くの製作ヤードであらかじめ造っておき、それを運んで架ける方法です。

「現場でつくる」か「運んできて据える」か。この発想の違いを念頭に置くと、これから見る六つの工法が、すっきりと頭に入ってきます。

なぜこの二択が生まれるのでしょうか。理由は、コンクリートという材料の性質にあります。コンクリートは、打ち込んだ直後は流動体で、固まるまで自分の形を保つことができません。鋼のように「完成した部材を運んで組む」というわけにはいかないのです。そこで、固まるまでのあいだ何かで支えながら現場で造ってしまうか、それとも先に別の場所で固めてから運んでくるか、という二つの道に分かれます。これが、コンクリート橋の架設工法を理解する根っこになります。

場所打ち工法——現場でコンクリートを打設する

場所打ち工法は、その名のとおり、現場でコンクリートを打ち込んで橋桁を造る工法です。現場で一体の橋桁を造れる自由度の高さが魅力ですが、支保工(しほこう)や型枠、養生(ようじょう)など、現場での作業が多くなります。固まる前のコンクリートをどう良い品質で打ち込むかは、それ自体が奥の深いテーマです。

【コンクリート橋の施工|品質を決める生コン管理ときめ細やかな段取り】
https://hashiwatashi.com/concrete-bridge-construction/

場所打ち工法には、代表的なものが四つあります。

固定支保工式架設工法

もっとも基本的なのが、固定支保工式架設工法です。架設場所に固定支保工(仮の支え)を組み立て、その上に型枠を設けてコンクリートを打設し、橋桁を造ります。

支保工が、固まる前のコンクリートと型枠の重さをすべて支えるため、支保工そのものと、それを支える基礎の強度を十分に検討することが欠かせません。橋桁が固まって自立できるようになったら、役目を終えた支保工は撤去されます。大型の架設用機械を必要としないのが利点ですが、桁の下に支保工を立てられる、地盤の良い場所であることが前提になります。地面を足場として使うという点で、鋼橋のベント工法と発想が通じ合っています。

移動支保工式架設工法

移動支保工式架設工法は、1径間(けいかん)分の支保工と型枠をひとまとめにした「移動支保工設備」を使う工法です。1径間を造り終えるたびに、この設備を次の径間へと移動させ、同じ施工を繰り返していきます。

毎回ゼロから足場を組み直す必要がなく、同じ作業の繰り返しになるため、工程を管理しやすく、品質が安定するのが大きな特徴です。径間数が多く、支間が等間隔に並ぶ高架橋のような橋で、特に力を発揮します。

押出し工法

押出し工法は、橋台の後方に、橋軸(きょうじく)方向、つまり橋の長さ方向にそって橋桁を造る製作ヤードを設ける工法です。そこで橋桁のブロックを次々に造り、架設用のPCケーブルで一体化させながら、前方へとじわじわ押し出していきます。

押し出された橋桁は、橋台や橋脚の上にあらかじめ設置された「滑り支承(すべりししょう)」の上を、滑るように進んでいきます。下を川や道路が横切っていて、桁下に支保工を立てにくい場所などに向きます。手前で造ったものを前へ送り出すという考え方は、鋼橋の送り出し工法のコンクリート版と言えます。

カンチレバー工法

カンチレバー工法は、橋脚から左右に向かって、桁を少しずつ張り出しながら造っていく工法です。3〜5mを一つのブロックとして、やじろべえのように左右のバランスをとりながら、両側へ伸ばしていきます。

支間が60m以上になるような橋で用いられる、一般的な架設工法です。左右へ同時に伸ばしていくのは、片側だけが重くなって橋脚に偏った力がかからないよう、つり合いをとるためです。下に支保工を立てずに進められるため、深い谷や、桁下の空間が使えない場所でも架設できます。なお、ブロックを現場で打設する場合と、あらかじめ造ったプレキャストのブロックを接合していく場合があります。橋そのものを足場にして前へ伸びていく点は、鋼橋の片持ち式工法とよく似ています。

プレキャスト工法——工場やヤードで造って運ぶ

プレキャスト工法は、橋桁の部材を、現場ではなく工場や現場近くの製作ヤードであらかじめ造っておき、それを運んで架ける工法です。

整った環境で部材を造れるため品質が安定し、現場での作業や工期を減らせるのが大きな利点です。固まる前のコンクリートを現場で良い品質に保つのは手間のかかる仕事ですが、その難所を、管理の行き届いた工場へ移してしまおう、という発想とも言えます。プレキャスト工法には、代表的なものが二つあります。

プレキャスト桁架設工法

プレキャスト桁架設工法は、橋桁そのものを、工場や現場付近の製作ヤードで一本のプレキャスト桁として造り上げ、所定の位置まで運搬して、クレーンなどで据え付ける工法です。

桁が完成品として運ばれてくるため、現場での作業は据付けが中心になります。現場でコンクリートを打って固まるのを待つ必要がないため、工期を短くできます。比較的支間の短い橋で広く用いられています。

プレキャストブロック架設工法

プレキャストブロック架設工法は、橋桁を長さ方向にいくつかのブロックに分けて製作し、架設地点の近くや架設位置で、接合面に接着材を用いてブロックを継ぎ足していく工法です。

継ぎ足したブロックには、PC鋼材でプレストレス(あらかじめ与えておく圧縮の力)を導入し、全体を一体の構造部材として仕上げます。大きく重い桁を、運びやすいブロックに分割できるため、運搬や架設の自由度が高いのが特徴です。

どの工法を選ぶ?コンクリート橋の架設工法早見表

ここまでの六工法を、グループと特徴で一覧にまとめます。

区分工法特徴・向いている場面
場所打ち固定支保工式架設工法仮の支え(支保工)の上で打設。大型機械は不要。桁下に支保工を立てられる場所
場所打ち移動支保工式架設工法1径間分の設備を移動して繰り返し施工。品質が安定。径間数が多く等間隔の橋
場所打ち押出し工法後方のヤードで造り前方へ押し出す。下を川や道路が横切る場所
場所打ちカンチレバー工法橋脚から左右へ張り出す。支間60m以上で一般的。深い谷にも対応
プレキャストプレキャスト桁架設工法桁を工場等で製作し運搬・据付け。比較的支間の短い橋
プレキャストプレキャストブロック架設工法ブロックに分けて製作し、接着・継ぎ足してプレストレスを導入

「現場で造る」か「運んで据える」か——選び方の勘どころ

二つのグループには、それぞれ長所と短所があります。

場所打ち工法は、現場で一体の橋桁を造れる自由度の高さが魅力です。その反面、支保工や足場の設置、養生といった現場作業が多くなり、天候の影響も受けやすくなります。一方のプレキャスト工法は、工場で安定した品質を造り込めて、現場の作業量や工期を減らせます。ただし、部材の運搬や、ブロックどうしの継手の管理が新たな課題になります。

どちらを選ぶかは、橋を架ける場所の地形、支間の長さ、径間の数、工期、そして橋の下に何があるかといった、さまざまな条件によって決まります。たとえば、橋の下に道路や鉄道が通っていて長く通行止めにできない場所なら、現場作業の少ないプレキャストや押出し工法が候補になりますし、径間が等間隔にいくつも続く高架橋なら、繰り返し施工できる移動支保工式が効いてきます。

近年は、現場での作業を減らして品質を安定させ、働き手の負担も軽くするという観点から、プレキャストの考え方が広がる傾向にあります。とはいえ、場所打ちでなければ造れない橋もあり、どちらが優れているという話ではありません。鋼橋のときと同じように、一本の橋でも区間ごとに工法を組み合わせることは珍しくありません。架設計画は、現場の条件を細かく読み解いて組み立てる、オーダーメイドの段取りなのです。

まとめ——コンクリート橋ならではの架け方

今回は、コンクリート橋の架設工法を見てきました。要点を振り返ります。

コンクリート橋の架設は、まず「現場でコンクリートを打設する場所打ち工法」と「工場やヤードで造って運ぶプレキャスト工法」に大別されます。場所打ちには、固定支保工式・移動支保工式・押出し工法・カンチレバー工法の四つが、プレキャストには、プレキャスト桁架設工法とプレキャストブロック架設工法の二つがあります。どれを選ぶかは、地形や支間、工期、周辺の条件しだいです。

鋼橋が部材を「組み立てて架ける」のに対し、コンクリート橋は材料そのものを「現場で固める」か「工場で固めて運ぶ」か——同じ橋を架ける作業でも、材料が変われば段取りの考え方もこれほど変わります。そして架設の途中の橋は、完成した姿とは違う、刻々と変化する不安定な状態にあります。その一瞬一瞬をどう安全に乗り越えるかという視点は、鋼でもコンクリートでも変わりません。

【橋を架けるときの考え方|刻々と変化する構造と現場の安全】
https://hashiwatashi.com/bridge-erection-approach/

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