ドローンのバッテリーとは?|リチウムポリマー電池の仕組みと安全な取り扱い

ドローンのバッテリーとは? ドローン

飛行時間20分と書かれた機体を、20分飛ばせると思って現場に持っていくと、たいてい足りません。カタログの数値は、無風で、カメラを動かさず、ほぼ静止した状態で測ったものです。実際の橋の点検では、桁下へ回り込み、風に逆らって位置を保ち、撮影しながら細かく動かします。同じバッテリーでも、消える速さがまるで違う。

この差を「そういうものだ」で済ませてしまうと、いつまでも残量計に振り回されます。ドローンの動力源であるリチウムポリマー電池は、他の電池とかなり性格が違っていて、その性格を知っていると、残量表示の読み方も、保管のしかたも、膨らんだ電池をどう扱うかも、ひと続きの理屈で説明がつきます。

なぜドローンはリチウムポリマー電池を積むのか

リチウムポリマー電池(りちうむぽりまーでんち)は、リチウムイオン電池の一種です。電気を運ぶ役目の電解質にゲル状の材料を使い、金属の缶ではなくアルミラミネートの袋で包んでいます。この構造のおかげで、薄く、軽く、好きな形に作れます。

ドローンにとって決定的なのは、重さあたりに取り出せるエネルギーの大きさです。機体が持ち上げられる重量には上限があり、そのうちバッテリーが占める割合は驚くほど大きい。小型の空撮機でも、機体総重量の3割前後をバッテリーが占めます。つまりドローンは、燃料を積んでいるというより、電池という重い部品を無理やり浮かせながら飛んでいる乗り物です。

ここから、ひとつの誤解が解けます。「大容量のバッテリーに替えれば長く飛べる」とは限らない、ということです。容量を増やせば電池は重くなり、重くなればホバリングを保つのに必要な推力が増え、消費電流も増えます。ある重量を超えると、増えた容量を増えた消費が食い尽くし、飛行時間はむしろ短くなる。バッテリーは燃料ではなく、機体の一部として設計に組み込まれた部品だと考えたほうが、実態に近いです。

機体が推力を生み出すしくみは、こちらで扱っています。

【ドローンはなぜ飛ぶのか】 https://hashiwatashi.com/how-drones-fly/

表示されている数値の読み方

バッテリーの側面には、いくつかの数値が並んでいます。それぞれが何を意味しているかを整理しておきます。

表示意味すること現場での効き方
mAh(ミリアンペアアワー)取り出せる電気の量大きいほど長く飛べるが、その分重い
V(ボルト)電圧。セルの数で決まる機体ごとに固定。互換性の判断材料
S(セル数)直列につないだ電池の個数3Sなら公称11.1V、6Sなら公称22.2V
C(シーレート)一度にどれだけ大電流を出せるか低いと急上昇や強風時に電圧が落ちる
Wh(ワットアワー)電圧と容量を掛けたエネルギー量航空機に持ち込めるかどうかを決める

このなかで、ふだん意識されにくいのがWhです。カタログにmAhしか書かれていないことも多いのですが、電圧を掛ければ求められます。たとえば15.4V・5000mAhのバッテリーなら、15.4×5=77Whです。この数字が、後述する持ち運びのときに効いてきます。

セル数の「S」も、意味を知っておくと役に立ちます。リチウムポリマー電池は、1個あたりの電圧が公称3.7V程度と決まっているので、必要な電圧を得るには直列につなぐしかありません。4Sなら4個分、6Sなら6個分が1つの袋に収まっている。バッテリーが1個の部品に見えて、中身は複数の電池の集合体だという点は、あとで出てくる膨張やセルの偏りの話につながります。

残量表示は、燃料計ではない

ここが、この電池を理解するうえで最も大事なところです。

自動車の燃料計は、タンクに残っている液体の量を測っています。半分なら半分、それ以上でもそれ以下でもありません。ところがドローンの残量表示は、タンクの中身を見ているわけではなく、電圧を測って残量を推定しているだけです。

リチウムポリマー電池の放電カーブ、つまり使うにつれて電圧が下がっていく曲線は、中盤が平坦です。満充電から使い始めてしばらくは、電圧がほとんど下がりません。そして残りが少なくなった終盤で、急に落ちます。だから残量表示は、前半なかなか減らず、後半で一気に減るように見える。「まだ半分あると思っていたのに、急に警告が出た」という体験の正体はこれです。

さらに厄介なのが、電圧降下です。強い風に逆らって位置を保とうとすると、モーターは大きな電流を要求します。電流が増えると、電池の内部抵抗によって端子電圧が一時的に沈む。すると残量表示も一緒に落ちます。風がやめば電圧はある程度戻り、表示も戻る。つまり表示は、残量だけでなく「今どれだけ無理をしているか」も混ぜて映しているわけです。

橋の点検は、この現象が起きやすい環境です。桁が風を巻き、谷筋は風を集め、水面の上では吹き上げが起きる。地上で穏やかでも、桁下では機体が姿勢を保つために出力を上げ続けていることがあります。残量表示の急な落ち込みを見たときに、電池が終わったのか、風に耐えているだけなのかを切り分けられるかどうかで、判断の質が変わります。

実務としては、残量30パーセントを撤収の合図にしておくのが無難です。20パーセントを切ってからの数値は、坂道を転げ落ちるように動きます。そして低温時や強風時には、この余裕をさらに厚く取ります。

膨らんだバッテリーは、なぜ元に戻らないのか

使い込んだバッテリーが、ふっくらと膨らんでくることがあります。機体のスロットに入りにくくなって、初めて気づくことも多い。

これは、袋の中でガスが発生している状態です。過充電、過放電、高温、深い放電の繰り返しといった負荷がかかると、電解質が分解してガスを出します。金属缶の電池なら安全弁から逃がす構造になっていますが、ラミネートの袋にはその逃げ道がありません。だから、袋そのものが膨らみます。

重要なのは、これが化学変化の結果だという点です。押しても抜けませんし、放置しても戻りません。針で穴を開けて抜くという発想は、内部の材料を空気に触れさせることになるので、最も避けるべき対処です。膨らみは故障の予兆ではなく、すでに起きてしまった劣化が外から見える形になったものだと理解してください。

判断は単純で、膨らんだら使わない。これに例外を作らないことです。膨張したバッテリーは、飛行中に電圧が落ちやすいだけでなく、発火のリスクも高い。あとで触れますが、膨らんだ電池は航空機に持ち込めず、回収ボックスでも引き取ってもらえないことが多いので、扱いに困る点でも厄介です。

保管が寿命を決める

リチウムポリマー電池が最も嫌うのは、満充電のまま長く置かれることです。電圧が高い状態は、電池の内部にとって常に緊張を強いられている状態にあたり、その時間が長いほど劣化が進みます。空にしたまま放置するのも同じくらいまずく、こちらは過放電で二度と充電を受け付けなくなることがあります。

したがって、しばらく飛ばさないなら、半分程度まで放電させてから保管するのが基本です。フル充電状態での保管は劣化を早めるため、40パーセントから65パーセント程度まで放電させておくことが推奨されています。

近年の機体に付属するバッテリーは、この管理を自動でやってくれます。DJIのインテリジェントフライトバッテリーには自己放電の機能があり、満充電のまま3日置くと96パーセントまで、操作のない状態が累計9日続くと60パーセントまで、自動的に放電します。この放電を開始するまでの日数は、アプリの設定で変更できる機種もあります。この機能があるからといって放置してよいわけではなく、長期保存の場合は3か月ごとに充放電して動作を維持することが案内されています。

置き場所は、直射日光の当たらない、涼しく乾いた場所です。とくに気をつけたいのが車内で、夏場のダッシュボードやトランクは容易に高温になります。現場から現場へ移動するあいだ、バッテリーを車に積みっぱなしにする運用は、劣化を早めるだけでなく事故の芽にもなります。断熱性のあるケースに入れる、車を降りるときは持ち出す、といった手当てが要ります。

寒さと暑さへの備え

冬の点検で飛行時間が読めなくなるのは、気のせいではありません。低温では電池内部の化学反応が鈍り、内部抵抗が上がります。すると同じ出力を出すのに電圧がより深く沈み、残量表示は実際より早く落ちていきます。容量が減ったのではなく、取り出しにくくなっているのですが、飛行時間としては短くなります。

対策は、飛ばす前に電池を温めておくことです。使う直前まで保温したケースに入れておく、車内で温めておく、といった準備が効きます。離陸後すぐに上空へ上げず、目線の高さで2、3分ホバリングさせて機体とバッテリーを暖機してから本飛行に入る方法も、現場では有効です。

逆に夏は、飛行直後のバッテリーが熱を持っています。熱いまま充電すると劣化が進むので、常温に戻るまで待ってから充電器に載せます。連続で飛ばす日ほど、この待ち時間が省かれがちなので、バッテリーの本数に余裕を持たせて、休ませる時間を確保しておくのが結局は早道です。

橋梁点検でドローンを使う場面の全体像は、こちらで整理しています。

【ドローンによる橋梁点検のメリットと課題|現状とこれからを解説】 https://hashiwatashi.com/drone-bridge-inspection/

持ち運びと、飛行機に載せるとき

遠方の現場へ飛行機で移動する場合、バッテリーの扱いには明確なルールがあります。リチウムイオン電池は原則として預け入れができず、機内持ち込みに限られます。そのうえで、先ほど求めたWhの値によって区分が変わります。

ワット時定格量取り扱い
100Wh以下機内持ち込み可。予備電池の個数制限は基本的にない
100Whを超え160Wh以下機内持ち込みのみ可。個数に制限がある
160Whを超える持ち込み、預け入れとも不可

160Whを超えるものは持ち込みも預け入れもできず、Wh数が確認できないものも輸送できません。産業用の大型機に使われるバッテリーは160Whを超えるものが珍しくないので、飛行機での移動そのものが成立しないことがあります。この場合は陸送を含めた計画が必要です。

なお、令和8年4月24日から、モバイルバッテリーの機内持ち込みについて新しいルールが適用されています。容量にかかわらず1人2個までとなり、機内での充電も禁止されました。ここで注意したいのは、ドローンのバッテリーは他の機器を充電する目的のものではないため、この区分でいう「モバイルバッテリー」ではなく、機器の予備電池として扱われる点です。100Wh以下の機材用バッテリーは、機器に装着された1個に加えて予備を複数持ち込めるのが国際基準上の一般的な運用です。ただし航空会社ごとに独自の制限を設けている場合があるので、事前の確認は欠かせません。端子は絶縁して個別に保護し、膨張や破損のあるものは持ち込めません。

車で運ぶ場合も、考え方は同じです。端子どうしが触れないように仕切り、金属工具と同じ箱に放り込まない。防爆をうたうバッテリーバッグを使うと、万一のときに被害を閉じ込められます。

使い終えたバッテリーの捨て方

寿命を迎えたバッテリーは、家庭ごみにも事業ごみにも混ぜてはいけません。収集車や処理施設での火災が全国で問題になっており、その原因の多くがリチウム系の電池です。

一般的なルートは、小型充電式電池の回収ボックスです。JBRCが全国の協力店や協力自治体で回収を行っており、家電量販店の店頭などに置かれている箱がこれにあたります。持ち込む前に、端子を絶縁テープで覆っておきます。

問題は、膨らんだバッテリーです。JBRCでは膨張したものを回収対象としておらず、店舗によっては引き取ってもらえます。破損、膨張、変形したもの、水に濡れたものは回収対象外とされているのが一般的です。この場合は、購入した販売店やメーカーに相談するのが確実です。塩水に漬けて放電させてから捨てるという方法がよく紹介されていますが、廃液の処理という別の問題が生じるうえ、メーカーが推奨している方法でもありません。安易に手を出さないほうがよいと考えます。

業務でドローンを使っている場合、廃棄物は産業廃棄物として扱われる可能性があります。処理を委託する業者にリチウム電池を扱えるか確認しておくこと、また保管本数が多くなるようであれば所轄の消防署に相談しておくことをすすめます。飛ばすことばかりに目が向きがちですが、電池の出口まで含めて運用設計です。

まとめ

この記事では、ドローンのバッテリーであるリチウムポリマー電池について、構造と数値の読み方から、残量表示のしくみ、膨張が起きる理由、保管と温度への備え、持ち運びと廃棄までを扱いました。

軸になるのは、残量表示が燃料計ではなく電圧計だという一点です。放電カーブが平坦であること、負荷がかかると電圧が沈むこと、この2つを知っていれば、表示の動き方は予測できます。予測できれば、いつ引き返すかを風と気温から先に決めておける。飛行時間の読み違いは、腕の問題ではなく、電池の性格を知っているかどうかの問題です。

そして膨らんだ電池を使わないこと、満充電で寝かせないこと、熱いまま充電しないこと。この3つを守るだけで、バッテリーの寿命はずいぶん変わります。機体は落ちなければ何年も使えますが、バッテリーは消耗品です。消耗の速さを決めているのは、飛ばしている時間よりも、飛ばしていない時間の扱い方のほうです。

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