斜張橋とは?構造の原理とケーブル配置の種類を解説

斜張橋とは? 橋梁

斜張橋(しゃちょうきょう)は、塔から斜めに張ったケーブルで、橋桁を直接支える形式の橋です。塔から伸びるケーブルが描く、すっきりとした姿で人気があり、各地でランドマークになっています。

ケーブルで桁を吊るという点では、吊橋(つりばし)と同じ仲間で、二つを合わせて「吊構造形式」と呼びます。ここでは、斜張橋の構造の原理から、力の流れ、ケーブルの配置の種類、吊橋とのちがい、そして身近な実例までを見ていきます。

斜張橋とは

斜張橋は、塔から斜め直線状に張ったケーブルで、桁の中間部を吊り支える形式の橋です。

その成り立ちは、桁橋の進化形として捉えると分かりやすくなります。橋の支間(しかん。支えと支えの間隔)が大きくなると、主桁(しゅげた)だけでは荷重を支えきれなくなります。そこで、塔から斜めに張ったケーブルで桁を所々から支えてやると、桁を支える間隔が小さくなり、ちょうど支点がいくつも並んだ連続桁のように働きます。その結果、主桁の断面を小さく、すっきりとさせることができるのです。

ケーブルの配置だけでなく、塔や桁の形式、使う材料の組み合わせも自由度が高く、見た目にも優れることから、斜張橋は長大橋にとどまらず、中小の橋や歩道橋にまで幅広く使われています。

近代的な斜張橋が生まれたのは、第二次世界大戦後のドイツで、ライン川に架けられたものが始まりとされています。少ない材料で架けられる利点がある一方、ケーブルにかかる力の計算など構造解析が難しく、長いあいだ小規模な橋を中心に使われてきました。流れが変わったのは20世紀の末ごろです。コンピュータによる構造解析や、施工技術が大きく進歩したことで、長大な斜張橋が次々と実現するようになりました。

斜張橋を支える力学的なしくみ

斜張橋では、力がどのように流れているのでしょうか。

主役となるのは、斜めに張られたケーブルです。ケーブルは、桁を斜め上方向へ引っぱり上げることで支えています。このとき、ケーブルにはたらく斜めの引張力は、上下方向(鉛直方向)の成分と、橋の長さ方向(橋軸方向)の成分に分けて考えることができます。鉛直方向の成分が桁を支え、橋軸方向の成分は、桁を内側へ押す圧縮力として作用します。このため、斜張橋の桁には、上を通る車などの鉛直荷重に加えて、橋軸方向の圧縮力がかかるのが特徴です。

ケーブルが引き受けた力は、最終的に塔の上部へと集まります。そして塔には圧縮力が作用し、その力は塔の足元の基礎を通じて地盤へと伝えられます。塔は、ケーブルの力を一身に引き受ける、斜張橋の大黒柱です。

ここで、斜張橋の大切な工夫があります。塔の左右にケーブルを張り、両側の引張力を塔のところで釣り合わせることで、ケーブルを地面に固定する巨大な重しを必要としないのです。引張に強いケーブルを主役に据える発想は吊橋と同じですが、力の支え方には、こうした斜張橋ならではの特徴があります。なお、ケーブルの引張力を上下と橋軸の成分に分けて考える見方は、構造力学の基本でもあります。

【橋梁工学を支える構造力学|コンピュータ時代に技術者が大切にすべきこと】 https://hashiwatashi.com/bridge-structural-mechanics/

斜張橋と吊橋のちがい

斜張橋と吊橋は、どちらもケーブルの引張力を利用した吊構造です。よく似ているようでいて、力の支え方には大きなちがいがあります。

項目斜張橋吊橋
ケーブルのかけ方塔と桁を、斜めのケーブルで直接つなぐ塔の間に主ケーブルを渡し、ハンガーで桁を吊る
桁にかかる力鉛直荷重+橋軸方向の圧縮力主に鉛直方向の力
アンカレイジ基本的に不要(塔の左右で釣り合わせる)必要(ケーブルを地盤に定着する)
ケーブルの量・架設ケーブルが少なく、架設が比較的容易で速いケーブルが主構造で、架設は大がかり
適した支間中くらい〜長大な支間より長大な支間

いちばんのちがいは、ケーブルのかけ方です。斜張橋は、塔と桁を斜めのケーブルで直接つないでいます。これに対して吊橋は、塔の間にまず大きな主ケーブルを渡し、そこから垂らしたハンガーで桁を吊っています。この構造のちがいが、桁にかかる力やアンカレイジの要不要といった、さまざまな差を生んでいるのです。

斜張橋がケーブルを少なく、また速く架けられるのは、塔から張ったケーブルが桁を直接支えるため、吊橋のようにまず主ケーブルを渡してからハンガーを下ろす、という二段構えが要らないからです。塔を建てたあと、桁を左右へ少しずつ張り出しては、その先端をケーブルで支えていく——そんな架け方ができる点も、斜張橋の強みです。吊橋のしくみについては、別の記事でくわしく解説しています。

【吊橋を詳しく知ろう|構造の原理と種類を解説】 https://hashiwatashi.com/suspension-bridge-details/

ケーブルの配置——放射型・ファン型・ハープ型

斜張橋の表情を大きく左右するのが、ケーブルの配置です。代表的なものに、三つの型があります。

放射型(ラジアル)は、塔の頂部の一点から、放射状にケーブルを張る配置です。すべてのケーブルが塔のてっぺんに集まります。

ファン型は、塔の上部の少しずつ異なる高さから、扇(おうぎ)を広げるようにケーブルを張る配置です。放射型に近いかたちですが、ケーブルの根もとが縦に少し散らばります。塔に余計な曲げの力がかかりにくく、力学的に効率がよいとされます。

ハープ型は、塔の側面に、ほぼ等間隔で、たがいに平行になるようケーブルを張る配置です。その姿が竪琴(ハープ)の弦に似ていることから、こう呼ばれます。整然と並んだケーブルが美しく、見た目の人気も高い配置です。

このほか、ケーブルを桁の中央に一列に張る「一面吊り」や、桁の両側に二列で張る「二面吊り」といった分け方もあり、橋の幅や用途に応じて選ばれます。

塔の形にも、さまざまなバリエーションがあります。一本の柱を立てたもの、吊橋のように二本を組んだもの、上部をすぼめた逆Y字型やA字型、門のような形など、橋の規模やケーブルの配置に合わせて選ばれます。ケーブルの配置と塔の形の組み合わせ次第で、斜張橋は実にさまざまな表情を見せるのです。

斜張橋の特徴

ここまでを踏まえ、斜張橋の特徴を整理しておきます。

  • 塔から伸びるケーブルが描く、美しい姿
  • ケーブル配置・塔や桁の形式・材料の組み合わせが自由で、設計の自由度が高い
  • 吊橋に比べて、ケーブルが少なくてすむ
  • 吊橋に比べて、架設が比較的容易で速い
  • その一方で、ケーブルの力を受け止める丈夫な塔が必要となる
  • 巨大なアンカレイジが要らないため、架ける場所の制約が比較的少ない

合理性と美しさを兼ね備えた、応用範囲の広い橋形式だと言えます。

斜張橋に似た橋——エクストラドーズド橋

斜張橋とよく似た見た目の橋に、「エクストラドーズド橋」があります。

ぱっと見は斜張橋のようですが、よく見ると、主塔が低く、ケーブル(斜材)の角度が水平に近いのが特徴です。そして、その力学的なふるまいは、吊構造よりも桁構造に近く、桁の剛性(かたさ)が斜張橋よりも大きくなっています。いわば、斜張橋と桁橋の中間に位置する橋だと言えます。桁の高さを抑えながら、桁橋では届きにくい比較的長い支間を、経済的に架けられる利点があり、中くらいの支間の橋で選ばれることがあります。見比べてみると、橋の奥深さが感じられます。

身近に見られる斜張橋

斜張橋は、全国各地で見ることができます。

日本を代表する斜張橋といえば、広島県と愛媛県を結ぶ本州四国連絡橋の一つ、多々羅大橋(たたらおおはし)です。中央径間(けいかん)は890mに達します。実はこの橋、当初は吊橋として計画されていましたが、途中で斜張橋に変更された経緯があり、完成した当時は世界最長の斜張橋でした。その後、2012年にロシアの橋にその記録を譲りましたが、今なお日本を代表する斜張橋の一つであることに変わりはありません。塔から扇状に広がるケーブルが、瀬戸内の海によく映えます。

このほかにも、横浜ベイブリッジ、富山県の新湊大橋(しんみなとおおはし)、鶴見つばさ橋など、各地に印象的な斜張橋があります。街なかや臨海部で、塔から斜めに伸びるケーブルの橋を見かけたら、それはきっと斜張橋です。

斜張橋の維持管理で注意したいこと

斜張橋は、多数のケーブルが橋を支えている構造です。そのため維持管理では、ケーブルそのものと、ケーブルを塔や桁につなぎとめる定着部(ていちゃくぶ)の傷みに、とりわけ注意が必要になります。

また、斜張橋のケーブルは、風や雨の影響を受けて振動することがあります。雨と風が組み合わさってケーブルが揺れる現象などが知られており、これを抑える工夫も施されます。ケーブルにかかる張力(軸力)が適切に保たれているか、高い塔の上のケーブル定着部に異常がないかも含めて、見守り続けることが、橋を長く健やかに保つうえで欠かせません。細く軽やかに見えるケーブルの一本一本が、橋全体の安全を担っているのです。こうした高所や狭い場所の点検では、ドローンのような新しい道具も役立ちます。

まとめ

この記事では、斜張橋について、構造の原理から力の流れ、ケーブルの配置、吊橋とのちがい、身近な実例までを見てきました。要点を振り返ります。

  • 斜張橋は、塔から斜めに張ったケーブルで桁を直接支える、吊構造形式の橋である
  • ケーブルは引張力を、塔は圧縮力を受け持ち、塔の左右で釣り合わせるためアンカレイジが基本的に要らない
  • 桁には、鉛直荷重に加えて橋軸方向の圧縮力が作用する
  • ケーブルの配置には、放射型・ファン型・ハープ型などがある
  • 吊橋とは、ケーブルのかけ方や桁にかかる力のちがいで区別される

塔から扇のように広がるケーブルには、力を効率よく伝えるという理にかなったしくみと、見る人をひきつける美しさとが、同時に込められています。次に斜張橋を目にしたら、そのケーブルがどんな型で張られているか、ぜひ眺めてみてください。

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