上部構造の造り方|鋼橋とコンクリート橋の違いを知る

上部構造 橋梁の基礎

はじめに

これまで、橋がどんな考え方で設計されるかを見てきました。ここからは、いよいよ「実際にどう造るのか」という話に入っていきます。

【橋を造るときの考え方|ライフサイクルコスト・長寿命化・災害対策】
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橋の中でも、人や車が通る部分である上部構造(じょうぶこうぞう)の造り方は、実は使う材料によって大きく変わります。同じ「橋を架ける」でも、鋼(はがね)で造る橋と、コンクリートで造る橋とでは、現場での進み方がかなり違うのです。この記事では、その違いがどこから来るのかを入り口に、鋼橋とコンクリート橋それぞれの造り方を、工程の流れとあわせて見ていきます。

造り方を分けるのは「部材の重さ」

鋼橋とコンクリート橋で造り方が変わる最大の理由は、橋を構成する部材の「重さ」の違いにあります。

鋼の部材は、コンクリートに比べて分割したときの一つひとつが軽く、運びやすいという特徴があります。そのため鋼橋では、部材を工場で造り、現場へ運んで組み立てる、という流れが基本になります。一方のコンクリートは重く、大きな部材をそのまま運ぶのが難しい場合も多いため、現場でコンクリートを打ちながら造ることも少なくありません。

ただし、設計条件や設計基準を確認し、設計を行い、使う材料の量を計算して図面を作成する——ここまでの流れは、鋼橋でもコンクリート橋でもほぼ共通です。違いが大きく出るのは、その先の「造る」段階というわけです。

【橋で使用する材料|鋼・コンクリート・PC鋼材の特性を解説】
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鋼橋の造り方

鋼橋は、部材の多くを工場で製作し、現場へ運んで架けていきます。まず、工場での製作はおおむね次のような流れで進みます。

  1. 材料の注文と入手
  2. 原寸(実際の寸法を確かめる)
  3. 罫書(けがき/部材に加工の印をつける)
  4. 加工
  5. 組立
  6. 溶接
  7. 仮組立(かりくみたて)
  8. 塗装
  9. 現地へ輸送

途中の「仮組立」では、造った部材を工場でいったん組み合わせてみて、設計どおりに仕上がっているかを確かめます。この段階で、発注者と施工する会社が打ち合わせを行い、発注者の承認と検査を受けます。現場で初めて「合わない」と分かると大きな手戻りになるため、工場での事前確認はとても大切な工程です。

現場では、運ばれてきた部材を順番に架設していきます。桁を架け終えたら、床版(しょうばん)や高欄(こうらん/橋の手すりにあたる部分)を取り付け、塗装を行います。そして最後に、発注者の立ち会いのもとで竣工検査(しゅんこうけんさ)が行われ、橋の工事が完了します。

コンクリート橋の造り方

コンクリート橋の造り方は、大きく2つに分けられます。

1つは、工場や現場近くのヤードであらかじめ部材を造り、現地へ運んで架ける「プレキャスト」の方式です。もう1つは、橋を架ける場所で支保工(しほこう/工事中に桁を支える仮設の支え)を組み、その上で直接コンクリートを打って造る「場所打ち」の方式です。運搬のしやすさや現場の条件によって、どちらで造るかが選ばれます。

このうち、プレキャストでPC桁を造る場合は、おおむね次のような流れになります。

  1. 材料の注文と入手
  2. 製作台の準備
  3. 型枠の加工・組立
  4. 鉄筋の加工・組立
  5. PC鋼材の加工・組立
  6. コンクリートの打込み
  7. PC鋼材の緊張
  8. グラウト作業(PC鋼材のまわりにモルタルを注入して保護する)
  9. 橋桁の運搬

この流れのうち、PC鋼材にかかわる工程(5・7・8)を除けば、鉄筋コンクリートの桁(RC桁)を造る流れとほぼ同じになります。では、この「PC」と「RC」は何が違うのでしょうか。

RC橋とPC橋の違い

コンクリート橋は、鉄筋コンクリート橋(RC橋)と、プレストレストコンクリート橋(PC橋)の大きく2つに分けられます。どちらもコンクリートと鋼材を組み合わせた橋ですが、力への備え方が違います。

コンクリートは、押される力(圧縮)には強い一方、引っ張られる力(引張)には弱く、ひび割れが生じやすいという性質があります。

RC橋は、この弱点を鉄筋で補う橋です。引っ張られる側に鉄筋を配置し、コンクリートが苦手な引張力を鉄筋に受け持たせます。

PC橋は、もう一歩進んだ工夫をしています。PC鋼材という強い鋼材をコンクリートの中に通し、それを強く引っ張って(緊張して)固定することで、コンクリートにあらかじめ圧縮の力を加えておきます。こうしておくと、橋に荷重がかかって引張が生じても、先に加えておいた圧縮で打ち消され、ひび割れが起きにくくなります。この「あらかじめ圧縮を入れておく」という考え方がプレストレスで、PC橋はRC橋よりも長い支間に対応しやすいという利点があります。

先ほどの流れにあった「PC鋼材の緊張」や「グラウト作業」は、まさにこのプレストレスを生み出し、長持ちさせるための工程というわけです。

鋼とコンクリートの複合構造

近年では、鋼とコンクリートの両方を組み合わせた複合構造も、上部構造に多く使われるようになりました。

代表的なのは、鋼の桁の上にコンクリートの床版を一体化させた合成桁(ごうせいげた)です。引張に強い鋼と、圧縮に強いコンクリートを、それぞれが得意な役割で組み合わせることで、両方の長所を生かそうという考え方です。材料を組み合わせる発想は、橋の造り方の幅をさらに広げています。

造り方は「その後」につながる

ここまで造り方を見てきましたが、現場の視点に立つと、「どう造るか」は「どう長く使うか」と地続きであることに気づきます。

たとえば、工場で部材を造るプレキャストが広く使われるようになった背景には、品質の確保があります。天候や足場に左右される現場よりも、管理された工場のほうが、安定した品質で部材を造りやすいのです。あわせて、現場での作業を減らせるため、工期の短縮や、人手不足が課題となっている建設現場の負担軽減にもつながります。

また、鋼橋で行う「仮組立」のように、造る段階での確認は、後々のトラブルを防ぐ意味でも大切です。

そして造り方は、完成後の維持管理にも影響します。鋼橋であれば塗装の塗り替えが、コンクリート橋であればひび割れや中性化(コンクリートが少しずつ劣化していく現象)への対応が、長く使ううえで欠かせません。点検や補修のしやすさまで見据えて造り方を選ぶことが、橋を長持ちさせる第一歩になります。

まとめ

この記事では、上部構造の造り方を、材料の違いという観点から見てきました。

  • 上部構造の造り方は、使う材料(鋼かコンクリートか)で大きく変わり、その違いは部材の重さから来る
  • 鋼橋は、部材を工場で造り、現地へ運んで順番に架設していく
  • コンクリート橋には、工場などで造って運ぶ「プレキャスト」と、現地で造る「場所打ち」がある
  • コンクリート橋はRC橋とPC橋に分かれ、PC橋はあらかじめ圧縮を加えることでひび割れに強く、長い支間に向く
  • 近年は、鋼とコンクリートの長所を生かした複合構造も使われている
  • 造り方は、その後の維持管理のしやすさにもつながっている

普段渡っている橋も、こうした工程を一つずつ積み重ねて造られています。次に橋を見るときは、その姿が「どんな手順で形になったのか」を、少しだけ想像してみてください。

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