はじめに
前回は、人や車が通る上部構造をどう造るかを見てきました。今回はその下、橋を足元から支える下部構造(かぶこうぞう)の造り方を取り上げます。
【上部構造の造り方|鋼橋とコンクリート橋の違いを知る】
https://hashiwatashi.com/bridge-superstructure-construction/
下部構造は、基礎・橋台(きょうだい)・橋脚(きょうきゃく)で構成されます。普段はあまり目立たない部分ですが、橋全体の重さや地震の力を最終的に地盤へと伝える、重要な役割を担っています。造るうえで何より大切になるのは、「安定性」と「安全性」の確保です。
下部構造に求められるのは「安定」
下部構造を造るとき、設計でも施工でも一貫して意識されるのが、橋が安定して立ち続けられるかどうかです。具体的には、次のようなことが起きないように造られます。
- 沈下(地盤に沈み込んでしまう)
- 転倒(傾いて倒れてしまう)
- 滑動(横にずれて動いてしまう)
- 部材に過大な応力や変形が生じる
地中や水中という見えにくい場所で、これらを防ぎながら橋を支える——それが下部構造に課せられた役割です。設計の考え方は、下部構造の設計の記事でも整理しています。
【下部構造の設計|基礎・橋台・橋脚を支える縁の下の力持ち】
https://hashiwatashi.com/bridge-substructure-design/
基礎の3つのタイプ
下部構造の中でも、いちばん下で橋を受け止めるのが基礎です。基礎は、橋を安定して支えられる固い地盤、すなわち支持層(しじそう)まで力を伝える必要があります。この支持層がどれくらいの深さにあるかによって、使う基礎の種類が変わってきます。代表的なのが、直接基礎・杭基礎(くいきそ)・ケーソン基礎の3つです。
直接基礎
直接基礎は、支持層となる固い土や岩が、地表から5メートル程度の比較的浅いところにある場合に多く使われます。
支持層まで掘削し、フーチング(基礎の底にあたる版)の上に足場を設け、鉄筋を組み、型枠を立てて、コンクリートを打ち込んで造ります。直接基礎は、おもにその底面から地盤へと力を伝えるのが特徴です。
杭基礎
杭基礎は、支持層が地表から10メートル以上の、比較的深いところにある場合に使われます。
地中に杭を打ち込み、その頭の部分にフーチングを設けて一体化させた基礎です。直接基礎が底面だけで力を伝えるのに対し、杭基礎は底面に加えて、杭の側面と地盤との摩擦などを通じても力を伝えられます。深い地盤にしっかり根を張るイメージです。
ケーソン基礎
ケーソン基礎は、支持層がさらに深い、おおむね40〜60メートルといった場所まで届かせたいときに用いられます。
ケーソンとは、円筒形や四角い箱の形をした枠のことです。この枠の中の土砂を掘り進めながら、枠自体の重さや上から加える荷重などを使って、少しずつ支持層まで沈めていきます。こうして据え付けたケーソンが、橋を深いところで支えます。ケーソン基礎には、構造のしくみによってオープンケーソン・ニューマチックケーソン・ボックスケーソンといった種類があります。
橋台・橋脚の造り方
基礎ができたら、その上に橋台や橋脚を造っていきます。橋台と橋脚は、造る手順がよく似ています。
橋台を造る手順の一例は、次のとおりです。
- 準備工
- 掘削
- フーチング構築
- 竪壁(たてかべ)構築
- パラペット構築
- 裏込め(うらごめ)・埋戻し(うめもどし)
- 工事完了
橋脚を造る手順の一例は、次のようになります。
- 準備工
- 掘削
- フーチング構築
- 躯体(くたい)構築
- 横梁(よこばり)構築
- 埋戻し
- 工事完了
ここで出てくる「裏込め」は、橋台の背面の空間に砂利や割栗石(わりぐりいし)を詰めて安定させること、「埋戻し」は、掘削した空間を土で埋めもどすことを指します。
橋台の形式
橋台にはいくつかの形式があります。代表的なのが逆T式橋台で、フーチングと竪壁の組み合わせが、アルファベットの「T」を逆さにした形に見えることからこの名で呼ばれます。竪壁は橋を受け止める縦の壁、その上のパラペット(胸壁)は背面の土を抑える小さな壁にあたります。橋台は、一般に鉄筋コンクリートで造られます。
橋脚の形式
橋脚には、鋼で造る鋼橋脚と、コンクリートで造るコンクリート橋脚があります。鋼橋脚は、工場で造ったブロックを現場へ運び、クレーンで順に積み上げて造られることが多い形式です。コンクリート橋脚は、高さが30メートル程度までであれば、橋脚のまわりに足場を組み、コンクリートを打ち込みながら造っていきます。形としては、1本柱の逆T式橋脚のほか、複数の柱と横梁を門のように組んだラーメン式橋脚などがあります。
見えない部分を、どう守り続けるか
ここまで造り方を見てきましたが、下部構造には、補修・維持管理の現場ならではの難しさがあります。基礎や橋脚の多くは、地中や水中という「見えにくい場所」にあるため、点検そのものが簡単ではないのです。
中でも注意したいのが、洗掘(せんくつ)です。これは、川の流れによって橋脚まわりの川底が削り取られていく現象で、進行すると基礎が露出し、橋を支える力が損なわれてしまいます。川の中の橋脚にとっては、見えにくいだけに見過ごせないリスクです。地震の際にも、下部構造が橋全体の安全を大きく左右します。
こうした見えにくい部分を確かめるために、近年は点検の方法も進んできました。高い橋脚や、人が近づきにくい水上まわりの確認に、ドローンを使った点検が活用される場面も増えています。
造るときに安定をしっかり確保することと、その後も見えにくい部分を粘り強く見守り続けること。その両方があってはじめて、橋は長く安全に使われ続けます。
まとめ
この記事では、下部構造の造り方を見てきました。ポイントを整理します。
- 下部構造(基礎・橋台・橋脚)は、沈下・転倒・滑動を防ぎ、安定して橋を支えることが基本
- 基礎は、支持層の深さに応じて直接基礎・杭基礎・ケーソン基礎を使い分ける
- 橋台と橋脚は造る手順がよく似ており、基礎の上に順に築いていく
- 橋台には逆T式など、橋脚には鋼橋脚・コンクリート橋脚やラーメン式などの形式がある
- 地中や水中にある下部構造は点検が難しく、洗掘などのリスクを見守る維持管理が欠かせない
次に橋を渡るときは、足元の見えない部分が、どれだけ深く地盤に支えられているかを、少し想像してみてください。


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