ラーメン橋とは?|柱と桁を一体にする剛結合のしくみと7つの種類を解説

ラーメン橋とは? 橋梁

「ラーメン橋」と聞いて、思わず食べ物を思い浮かべた方、ご安心ください。だれもが最初はそうです。しかし橋の世界のラーメンは、麺とはまったくの無関係。そして実は、都市の高架橋を歩けば必ず出会うほど、私たちの暮らしのすぐそばにある橋なのです。

ここでは、ラーメン橋とは何かという定義と語源から、柱と桁を一体にする剛結合の力学、支承をなくすことの利点と代償、7つの代表的な種類、そして「ベタ踏み坂」で有名になったあの橋まで、ラーメン橋の世界をまるごと解説します。

ラーメン橋とは——語源はドイツ語の「枠」

ラーメン橋とは、上部構造の桁(水平方向の部材)と、下部構造の橋脚(縦方向の部材)を、剛結合(ごうけつごう)で一体化した構造の橋です。

「ラーメン」は、ドイツ語のRahmen(ラーメン)が語源で、「枠」「額縁」「窓枠」を意味します。垂直方向の柱と水平方向の梁を組み合わせて支えるラーメン構造——建物の骨組みでもおなじみの、あの「枠」の構造を基本とした橋、というわけです。

ふつうの桁橋では、桁と橋脚のあいだに支承(ししょう:荷重を受け渡す部品)をはさみ、上部構造と下部構造を分離しています。桁は支承の上に「載っている」だけ。これに対してラーメン橋は、支承を介さず、桁と橋脚をがっちりと固定してしまいます。載せるのではなく、つなげる。この一点が、ラーメン橋のすべての個性の出発点です。

橋の形式全体の中での位置づけは、こちらの分類ガイドで確認できます。

【橋の種類|構造形式・用途・材料で分かる分類ガイド】 https://hashiwatashi.com/bridge-types/

剛結合の力学——枠になって、みんなで支える

剛結合とは、部材どうしを、角度が変わらないように固く結合することです。各部材が強固に連結されているため、外からの力を受けると、部材には曲げモーメント(曲げようとする力)、せん断力(断ち切ろうとする力)、そして軸力(部材の軸方向に押し引きする力)が生じます。

これは、力の受け持ち方が「総力戦」になることを意味します。桁だけが荷重に耐えるのではなく、剛結された橋脚も一緒に曲げに抵抗する。桁と橋脚が互いに力を分担し合うぶん、桁の断面を小さく抑えられ、経済性にも富みます。

さらに、柱と梁の「枠」で支えるため、橋の内側に広い空間をつくり出せるのも持ち味です。桁下を道路や店舗として使いたい都市部で、ラーメン橋の高架橋が多用されるのは、この空間の自由さと経済性のたまものです。

支承がないことの功と罪

ラーメン橋の最大の特徴は、支承が不要なことです。これには、はっきりした光と影があります。

まず、光の側。支承は、経年で劣化し、地震で壊れることもある、維持管理の手がかかる部品です。それが最初から存在しなければ、点検も交換も要らず、維持管理がしやすくなります。地震時には、桁と橋脚が一体で挙動するため、橋脚の変形や断面力を桁が拘束して小さく抑えられ、支承が壊れて桁が落ちる——という形の落橋の心配もありません。ラーメン橋が「地震時に粘り強い」と評されるのは、この一体性ゆえです。

次に、影の側。支承には、実は「縁を切る」という大切な働きがありました。地震のとき、支承があれば橋脚の揺れは桁に伝わりにくい。ところがラーメン橋では、支承がないぶん、地震の影響が橋脚から主桁へそのまま伝わってしまいます。つまり、橋脚だけでなく主桁に対しても耐震設計が必要になるのです。

しかも、桁と橋脚が一体となったラーメン橋は、地震時の力の流れが複雑です。そのため設計では、実際の地震波や人工地震波の時刻歴(時間の流れに沿った揺れの記録)を用いて、揺れの中で構造がどうふるまうかを追いかける動的な解析が必要になります。単純に「静かな力」に置き換えて計算するだけでは、済まないのです。

橋を地震から守る設計の考え方は、こちらで詳しく扱っています。

【耐震設計の考え方|地震から橋を守る設計の基本】 https://hashiwatashi.com/bridge-seismic-design/

ラーメン橋の特徴——なぜコンクリート橋に多いのか

ラーメン橋の特徴を整理すると、次の4点に集約されます。地震時に粘り強いこと。支承が不要で、維持管理がしやすいこと。建設コストが安いこと。そして、コンクリート橋での採用事例が多いことです。

最後の一点には、明快な理由があります。コンクリート橋では、桁と橋脚の剛結合が、鉄筋によって容易につくれるからです。鉄筋を桁から橋脚へ連続して配置し、コンクリートを一体に打ち込めば、それだけで強固な剛結合が生まれる。部材どうしの接合に手間のかかる鋼橋に比べ、コンクリートとラーメン構造は、生まれつき相性が良いのです。

7つの代表的な種類——枠の形は自由自在

接合部が剛結合されているラーメン橋は、形状の自由度が高いのも魅力です。代表的な形式を一覧にしてみましょう。

形式特徴
門形ラーメン橋鉛直の脚2本と桁が「門」の形をつくる、最も基本的な形式
π形ラーメン橋ギリシャ文字のπのように、桁の内側に寄った2本の脚で支える形式
方杖ラーメン橋斜めの部材(方杖)で桁を支え、支間を実質的に短くする形式
V脚ラーメン橋V字に開いた脚が桁を支える、軽快でデザイン性の高い形式
連続ラーメン橋複数の径間を連続させた形式。PC橋の多径間連続ラーメンが代表
複合ラーメン橋鋼とコンクリートなど、異なる材料の部材を剛結して組み合わせる形式
フィーレンデール橋上部構造そのものがラーメン構造になった特殊な形式

門形ラーメン橋は、桁の両端に鉛直の脚が立つ、いちばんシンプルな姿です。ただし、単純に見えて、力学的には繊細な一面を持ちます。桁の変形を脚が拘束しているため、温度変化などで桁が伸び縮みしようとすると、剛結された隅角部(すみかくぶ:桁と脚が直角に出会う角)の応力状態が複雑になるのです。設計では、こうした二次的な応力の変化を適切に評価する必要があります。

π形ラーメン橋は、脚を桁の端ではなく内側に寄せた形式で、谷をまたぐ道路橋などで見られます。方杖(ほうづえ)ラーメン橋は、桁を斜めの部材で下から支える形式です。つっかえ棒を思い浮かべてください。斜材が支えるぶん、桁が実質的に支えられる間隔は短くなり、桁の断面を小さくできます。V脚ラーメン橋は、1点から2方向へV字に開く脚が特徴で、見た目に動きと軽快さが生まれ、景観を重視する場面で選ばれます。

連続ラーメン橋は、この構造を複数の径間にわたって連続させたもので、とくにPC(プレストレストコンクリート)橋の多径間連続ラーメン橋として、山あいの高速道路などで数多く活躍しています。複合ラーメン橋は、たとえば鋼の桁とコンクリートの橋脚のように、材料の異なる部材どうしを剛結する形式です。それぞれの材料の得意を活かす、いいとこ取りの発想です。

そしてフィーレンデール橋。これはラーメン橋の特殊な例で、橋脚と桁の話ではなく、上部構造そのものがラーメン構造になっている橋です。梯子を横倒しにしたような、四角い枠の連なり。一見トラス橋のようですが、トラスの命である斜材がなく、格点(部材の交点)が剛結されているため、構造上はラーメン橋に分類されます。19世紀末にベルギーの技師フィーレンデールが考案した形式で、日本では希少な存在。東京の日本橋川に架かる豊海橋(とよみばし、1927年完成の震災復興橋)が日本初の例として知られ、その端正な姿は今も現役です。

「ラーメン橋」と呼ばない親戚

ここで一つ、まぎらわしい親戚を紹介しておきます。桁を、橋脚ではなく、比較的剛体に近い橋台(きょうだい:橋の両端で桁を支える構造)にそのまま剛結した橋です。

桁と下部構造が剛結されているのだから、ラーメン橋では?——と思いきや、これはラーメン橋とは呼ばず、両端固定の桁橋といいます。ラーメン構造の妙味は、柱と梁が「枠」として互いにしなやかに力を分担し合うところにあります。ほとんど変形しない橋台にがっちり固定された桁は、枠というより「両端をつかまれた棒」。同じ剛結でも、力学の性格が違うのです。定義の線引きから、構造の本質が見えてくる好例といえます。

維持管理の視点——剛結部こそ、よく見る

点検の立場から、一つ付け加えます。ラーメン橋を見るとき、主桁と橋脚に加えて、とくに注意して見たいのが、それらの剛結部です。

剛結部は、曲げ・せん断・軸力が集中して行き交う、力の流れが複雑な場所です。門形ラーメンの隅角部で応力状態が複雑になる話をしましたが、これは供用中も同じこと。温度変化のたび、車両が通るたび、この角には複雑な力が働き続けています。支承がないぶん維持管理がしやすいラーメン橋ですが、「見るべき急所」がなくなったわけではなく、剛結部へと移った——そう捉えるのが、点検の心得です。

【橋の維持管理と想像力|前兆を読み、リスクを見すえる予防保全の考え方】 https://hashiwatashi.com/bridge-maintenance-imagination/

身近に見られるラーメン橋——「ベタ踏み坂」江島大橋

身近なラーメン橋の実例として、江島大橋(えしまおおはし)を紹介します。

江島大橋は、2004年に完成した、島根県松江市と鳥取県境港市を結ぶ橋です。中海に架かる全長1,446mの橋で、構造形式はPCラーメン箱桁橋。中央支間長は250mで、PCラーメン橋としては日本最大、世界でも第3位の長さを誇ります。最高地点の高さは水面から44.7mに達し、桁下を5,000トン級の船舶が通航できるよう設計されました。

PC(プレストレストコンクリート)は、コンクリートにあらかじめ圧縮力を与えて、引張への弱さを補う技術です。詳しくはこちらで解説しています。

【プレストレストコンクリート橋を詳しく知ろう|PC橋のしくみと特徴】 https://hashiwatashi.com/prestressed-concrete-bridge-details/

この橋は、2013年に放映された自動車のテレビCMで「ベタ踏み坂」として一躍有名になりました。アクセル全開でないと登れないように見える急勾配が話題を呼び、今では国内外から観光客が訪れる撮影スポットです。実際の勾配は島根側6.1%、鳥取側5.1%で、写真で見るほど急ではないのですが、望遠レンズの圧縮効果が、あの壁のような景観を生んでいます。橋を渡れば鳥取県側には水木しげるロードなどの観光地も広がっており、山陰を訪れる際にはぜひ立ち寄りたい一橋です。

まとめ

この記事では、ラーメン橋を解説しました。

ラーメン橋とは、ドイツ語で「枠」を意味するRahmenの名のとおり、桁と橋脚を剛結合して一体の枠とした橋です。支承が不要になることで維持管理がしやすく、地震時に粘り強い一方、地震の影響が主桁にまで伝わるため、主桁の耐震設計と動的な解析が求められます。門形・π形・方杖・V脚・連続・複合、そして上部構造自体が枠になったフィーレンデール橋まで、剛結合ゆえの形の自由さも魅力です。

支承という「縁切り役」をなくし、みんなで力を分担する道を選んだ橋、ラーメン橋。都市の高架を見上げたとき、桁と脚が継ぎ目なくつながっていたら、それはこの「枠の橋」です。どこで力を受け、どの角が踏ん張っているのか——構造の物語を思い浮かべながら眺めると、毎日の高架下の風景が、少し違って見えてくるはずです。

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