伸縮装置とは?橋の伸び縮みを受け止める継ぎ目の役割と種類

伸縮装置 橋梁の基礎

はじめに

車で橋を渡るとき、路面に金属のギザギザした継ぎ目があって、タイヤが「タンッ」と小さな音を立てる——そんな経験はないでしょうか。あの継ぎ目こそ、今回取り上げる伸縮装置(しんしゅくそうち)です。エキスパンションジョイントとも呼ばれます。

前回は、橋の動きを引き受ける支承を取り上げました。伸縮装置も同じく、橋の「動き」に対応するための部位です。今回は、橋がなぜ伸び縮みするのか、そしてそれをどう受け止めているのかを見ていきます。

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なぜ橋は伸び縮みするのか

橋は、頑丈で動かないもののように見えますが、実際にはわずかに伸びたり縮んだりしています。おもな原因は次のようなものです。

  • 気温の変化:鋼やコンクリートは、暖まると伸び、冷えると縮みます
  • コンクリートのクリープや乾燥収縮(かんそうしゅうしゅく):コンクリートは、時間の経過とともにゆっくり変形したり、乾いて縮んだりします
  • 車両の通行:車が通るたびに、桁はわずかにたわみます

橋が長くなるほど、こうした伸び縮みの量は大きくなります。そのため、長い橋では桁を一続きにせず、途中に継ぎ目を設けて、伸び縮みを逃がせるようにしています。

ただし、継ぎ目にただ隙間をあけておくだけでは困ったことが起きます。隙間を大きくとりすぎると、寒い冬に隙間が大きく開いて、車の通行に支障が出てしまいます。逆に隙間が足りなければ、夏に橋が伸びたときに継ぎ目同士がぶつかってしまいます。この継ぎ目をうまく埋めて、車が支障なく走れるようにするのが、伸縮装置の役目です。

伸縮装置の役割

伸縮装置は、橋桁の端(桁端/けったん)の継ぎ目に取り付けられ、橋が伸び縮みしても路面に大きな段差や隙間ができないようにする装置です。橋の伸び縮みに合わせて自身も伸び縮みし、車輪が滑らかに渡れる路面を保ちます。

設計のときには、その橋がどれくらい伸び縮みするかを計算し、それに見合うだけの伸縮量に対応できる装置を選びます。伸び縮みの量を正しく見込んでおくことが、伸縮装置選びの出発点になります。

伸縮装置の種類

伸縮装置には、材料や伸縮量に応じてさまざまな種類があります。

材料による違い

材料としては、鋼製のものやゴム製のものが主に使われますが、アルミニウム製のものもあります。それぞれ、強さや静かさ、コストなどに特徴があります。

伸縮量による分類

どれくらいの伸び縮みに対応するかによって、選ばれる型式が変わります。目安としては、次のように使い分けられます。

  • 埋設型(まいせつがた):伸縮量がおおむね20mm未満と小さい場合に使われる、舗装に埋め込むタイプ
  • 突合せ型(つきあわせがた):伸縮量がおおむね35mm未満までで、車輪の荷重を直接は支持しないタイプ
  • 荷重支持型:それ以上の大きな伸縮量に対応する、車輪の荷重を支持するタイプ

橋が長く、伸縮量が大きくなるほど、しっかりと荷重を支えられる型式が必要になる、というイメージです。

代表的なジョイント

荷重支持型の伸縮装置には、たとえば次のようなものがあります。

  • 鋼製フィンガージョイント:指を組み合わせたような形の鋼製の装置で、日本で多く使われています
  • モジュラー型ジョイント:大きな伸縮量にも対応できる装置で、ヨーロッパで実績が多いとされます
  • アルミニウム製ジョイント:騒音を抑える効果が期待できる装置です

橋を渡るときに足元の継ぎ目を見ると、こうした形の違いに気づけるかもしれません。

維持管理から見た伸縮装置

伸縮装置は、補修・維持管理の現場では「傷みやすく、目を離せない部位」の代表格です。

理由のひとつは、過酷な使われ方にあります。とくに道路橋の伸縮装置は、車輪の荷重を長期間、繰り返し受け続けます。そのため、かなりの耐久性が求められ、使ううちにすり減ったり、がたついたりしやすい部位です。

もうひとつは、漏水(ろうすい)の問題です。伸縮装置のある桁端は、橋の構造が途切れる「不連続な場所」です。ここから雨水が下へ漏れると、すぐ下にある支承や、桁の端、さらに下部構造の傷みを早めてしまう恐れがあります。そのため、伸縮装置には、水を通しにくくする止水性(しすいせい)にも十分な注意が必要です。

実際の点検でも、伸縮装置は念入りに確認される箇所です。段差やがたつき、ゴムの破れ、そして継ぎ目からの漏水の跡がないか——こうした小さなサインを早く見つけることが、橋全体を守ることにつながります。普段は気に留めない路面の継ぎ目ひとつにも、橋を長持ちさせるための工夫と、それを見守る目が注がれているのです。

まとめ

この記事では、橋の伸び縮みを受け止める伸縮装置について見てきました。ポイントを整理します。

  • 橋は、温度変化やコンクリートのクリープ・乾燥収縮、車の通行などによって伸び縮みする
  • 伸縮装置は、桁端の継ぎ目を埋め、車が段差なく走れるようにする装置
  • 設計では、橋の伸縮量を計算したうえで、それに見合う装置を選ぶ
  • 伸縮量に応じて、埋設型・突合せ型・荷重支持型などが使い分けられる
  • 車輪の荷重を繰り返し受けるため耐久性が求められ、漏水を防ぐ止水性や日々の点検が欠かせない

次に橋を渡るときは、路面の継ぎ目に少し目を向けてみてください。橋が静かに伸び縮みしていること、そしてそれを受け止める工夫があることを、足元から感じられるかもしれません。

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