橋には、実にさまざまな種類があります。街なかの小さな歩道橋から、海をまたぐ巨大な吊橋まで、その姿は千差万別です。
一見ばらばらに見える橋たちも、いくつかの切り口で整理すると、すっきりと見通せるようになります。その切り口が、「構造形式」「用途」「材料」という3つの軸です。同じ橋でも、見る角度を変えれば違った顔が見えてくる——そこが橋のおもしろさでもあります。
この記事は、ハシワタシでこれまで扱ってきた橋の種類を、この3つの軸で整理した「地図」です。橋の全体像をつかみたいときの見取り図として、また、気になる橋を深掘りしていく入り口として、ご活用ください。橋そのものの定義や役割については、こちらでまとめています。
【橋梁とは何か?定義・役割・種類を解説】 https://hashiwatashi.com/what-is-bridge/
橋を3つの軸で分類する
橋を分類する3つの軸を、最初に整理しておきます。
「構造形式」は、橋がどんな力学的なしくみで荷重を支えているかによる分類です。桁橋(けたばし)・トラス橋・アーチ橋・吊橋(つりばし)・斜張橋(しゃちょうきょう)が代表的で、これにラーメン橋を加えた6種類を基本と考えると分かりやすくなります。
「用途」は、橋が何を渡すために架けられているかによる分類です。道路橋・鉄道橋・歩道橋が代表例です。
「材料」は、橋の主要な部分が何で造られているかによる分類です。鋼(はがね)・鉄筋コンクリート(RC)・プレストレストコンクリート(PC)・複合材料・新しい材料などがあります。
実際の橋は、これら3つの軸の組み合わせで成り立っています。それでは、順番に見ていきましょう。
構造形式による分類
構造形式は、橋の力学的なしくみによる分類です。同じ「橋」と呼ばれるものでも、力の伝え方はまったく異なります。
桁橋(けたばし)
桁橋は、水平に渡した桁で荷重を支える、最もシンプルな形式の橋です。桁の曲げ抵抗で荷重を受け、両端の橋台や橋脚へ伝えます。構造が単純で施工しやすく、コストも抑えられるため、日本で最も多く架けられている形式です。身近な道路橋の多くが、この桁橋にあたります。桁の断面によって、I桁、鈑桁(ばんげた)、箱桁などの種類があります。
【桁橋とは?|鈑桁橋・箱桁橋の違いと特徴】 https://hashiwatashi.com/girder-bridge-details/
トラス橋
トラス橋は、三角形を基本とした骨組みで荷重を支える形式の橋です。三角形は力学的に安定した形で、各部材には引張力(ひっぱりりょく)か圧縮力(あっしゅくりょく)のどちらかだけがかかるため、少ない材料で大きな荷重に耐えられます。鉄道橋や古くからの道路橋に多く、独特の骨組みが印象的です。ワーレントラスやプラットトラスなど、組み方による種類があります。代表例として、関西国際空港と本土を結ぶ全長約3,750mの連絡橋があり、上が道路・下が鉄道という二層構造になっています。
【トラス橋とは?|構造の原理と種類を解説】 https://hashiwatashi.com/truss-bridge-details/
アーチ橋
アーチ橋は、弓なりのアーチで荷重を支える形式の橋です。アーチには主に圧縮力がかかるため、圧縮に強いコンクリートや石との相性がよい形式です。古代ローマ時代から造られてきた歴史があり、美しい曲線は景観としても親しまれてきました。路面の位置によって、上路式(じょうろしき)・下路式(かろしき)・中路式(ちゅうろしき)の分類もあります。長崎の眼鏡橋(めがねばし)は、江戸時代に造られた石造りのアーチ橋で、水面に映る姿が眼鏡のように見えることからこの名がつきました。日本最古級の石造アーチ橋として知られています。
【アーチ橋とは?|構造の原理と種類を解説】 https://hashiwatashi.com/arch-bridge-details/
吊橋(つりばし)
吊橋は、主塔の間に渡した主ケーブルから、ハンガーロープで桁を吊り下げる形式の橋です。長大橋(ちょうだいきょう)に適しており、世界最長クラスの橋の多くがこの形式で架けられています。兵庫県の明石海峡大橋が代表例で、中央支間長(ちゅうおうしかんちょう)は1,991mに及びます。
【吊橋とは?|構造の原理と種類を解説】 https://hashiwatashi.com/suspension-bridge-details/
斜張橋(しゃちょうきょう)
斜張橋は、主塔から斜めに張ったケーブルで桁を直接支える形式の橋です。吊橋と似ていますが、ケーブルが桁を直接支えている点が大きな違いです。中規模から長大なスパンに適し、近年は各地で多く架けられています。広島県と愛媛県を結ぶ多々羅大橋(たたらおおはし)は、中央径間890mで、完成当時は世界最長の斜張橋でした。
【斜張橋とは?|構造の原理とケーブル配置の種類を解説】 https://hashiwatashi.com/cable-stayed-bridge-details/
ラーメン橋
ラーメン橋は、橋桁と橋脚(きょうきゃく)を剛結(ごうけつ)した形式の橋です。「ラーメン」はドイツ語で「枠」を意味する言葉で、食べ物のラーメンとは関係ありません。桁と橋脚が一体となって荷重を支えるため、桁を細くできる利点があり、高架橋や跨線橋(こせんきょう)でよく採用されます。
【ラーメン橋とは?|構造の原理と種類を解説】 https://hashiwatashi.com/rahmen-bridge-details/
その他の構造形式
基本の6形式のほかにも、可動橋(かどうきょう)、水路橋(すいろきょう)、跨道橋(こどうきょう)など、特殊な用途や機能をもつ橋があります。
【楽しく学べるいろいろな橋の形|可動橋・水路橋・跨道橋を解説】 https://hashiwatashi.com/unique-bridge-types/
5種類を一覧で比較
構造形式の代表的な5種類を、力の支え方とあわせて整理すると、次のようになります。
| 種類 | 力の支え方 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 桁橋 | 桁の曲げで支える | 最もシンプルで、普及率が高い | 身近な道路橋の多く |
| トラス橋 | 三角形の骨組み(引張と圧縮)で支える | 少ない材料で大きな荷重に耐える | 関西国際空港連絡橋 |
| アーチ橋 | アーチの圧縮で支える | 曲線の美しさと長い歴史をもつ | 眼鏡橋(長崎) |
| 吊橋 | 主ケーブルの引張で吊って支える | 長大橋に適する | 明石海峡大橋 |
| 斜張橋 | 斜めのケーブルの引張で直接支える | 中〜長大スパン・施工性に優れる | 多々羅大橋 |
こうして並べると、同じ「橋」でも、力の支え方がまるで違うことがよく分かります。
用途による分類
用途による分類は、橋が何を渡すために架けられているかという視点での分類です。同じ構造形式の橋でも、用途によって設計の細部や、使われる部材の規模が変わってきます。
道路橋
道路橋は、自動車や歩行者の通行を目的とした橋です。日本にある橋の大多数が、この道路橋に分類されます。自動車荷重(じどうしゃかじゅう)と呼ばれる設計上の荷重が定められており、これに基づいて設計されます。
鉄道橋
鉄道橋は、鉄道車両の通行を目的とした橋です。鉄道車両は道路車両よりも重く、しかも線路という限られた範囲に荷重が集中するため、設計上の配慮が異なります。また、列車の通過によって生じる振動への対策も重要になります。
歩道橋
歩道橋は、歩行者や自転車の通行を目的とした橋です。道路橋に比べて設計荷重が小さいぶん、より軽快なデザインが可能です。近年は、駅前や商業施設の周辺で、意匠を凝らした歩道橋も増えています。
用途による分類は、こちらでもくわしく整理しています。
【橋梁の種類|用途による分類(道路橋・鉄道橋・歩道橋)】 https://hashiwatashi.com/bridge-types-by-use/
材料による分類
材料による分類は、橋の主要な部分が何で造られているかという視点での分類です。材料ごとに、強度・耐久性・施工性・コストの面で、異なる特徴があります。
鋼橋(こうきょう)
鋼橋は、主要部材に鋼(はがね)を用いた橋です。鋼は引張にも圧縮にも強く、加工性にも優れるため、さまざまな構造形式に使われます。軽量で高強度なので長大橋にも適する一方、さびを防ぐ塗装などの対策が欠かせません。
【鋼橋を詳しく知ろう|材料の特性と構造の特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/steel-bridge-details/
鉄筋コンクリート橋(RC橋)
RC橋は、コンクリートの中に鉄筋を配して補強した橋です。コンクリートは圧縮に強く引張に弱いため、引張を担う鉄筋と組み合わせることで、橋として成り立たせています。京都市の日ノ岡第11号橋は、田邉朔郎(たなべさくろう)の設計による日本最初期のRC橋として知られ、現存しています。
【鉄筋コンクリート橋を詳しく知ろう|RC橋の構造と特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/reinforced-concrete-bridge-details/
プレストレストコンクリート橋(PC橋)
PC橋は、あらかじめコンクリートに圧縮の力を入れておくことで、引張に弱いという弱点を克服した橋です。「プレストレス」とは、事前に応力(おうりょく)を与えておくという意味です。石川県七尾市の長生橋(ちょうせいばし)は、日本初のPC道路橋として知られ、戦後復興期の日本のPC技術の出発点となりました。
【プレストレストコンクリート橋を詳しく知ろう|PC橋の構造と特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/prestressed-concrete-bridge-details/
複合橋
複合橋は、鋼とコンクリートなど、複数の材料を組み合わせて造られた橋です。それぞれの材料の長所を活かし、短所を補い合うことで、より効率的な構造を実現できます。
【複合橋を詳しく知ろう|合成橋・混合橋の構造と特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/composite-bridge-details/
新しい材料を用いた橋
近年は、FRP(繊維強化プラスチック)、アルミニウム合金、チタンなど、新しい材料を用いた橋も実用化されています。軽さや、さびにくさといった特徴があり、特定の条件下では従来の材料に勝る性能を発揮します。
【新しい材料を用いた橋を詳しく知ろう|FRP・アルミニウム合金・チタンの活用】 https://hashiwatashi.com/new-material-bridge-details/
材料による分類は、こちらでもくわしく整理しています。
【橋梁の種類|材料による分類(鋼・コンクリート・木)】 https://hashiwatashi.com/bridge-types-by-material/
3つの軸を組み合わせて橋を見る
ここまで、構造形式・用途・材料という3つの軸で、橋の分類を整理してきました。実際の橋は、これら3つの軸の組み合わせで成り立っています。たとえば、
- 明石海峡大橋:吊橋(構造)×道路橋(用途)×鋼(材料)
- 瀬戸大橋:トラス橋・斜張橋・吊橋の組み合わせ(構造)×道路・鉄道併用橋(用途)×鋼(材料)
- 日ノ岡第11号橋:桁橋(構造)×道路橋(用途)×RC(材料)
このように3つの軸で見ると、それぞれの橋の個性が立体的に浮かび上がってきます。橋を見る目を養うには、目の前の橋が、どの軸でどのように分類されるのかを意識してみるのがおすすめです。いつもの通勤路で渡る橋も、きっと違って見えてくるはずです。
まとめ
この記事では、橋の種類を「構造形式」「用途」「材料」の3つの軸で整理しました。要点を振り返ります。
- 構造形式では、桁橋・トラス橋・アーチ橋・吊橋・斜張橋・ラーメン橋の基本6形式に加え、可動橋・水路橋・跨道橋などの特殊な形式がある
- 用途では、道路橋・鉄道橋・歩道橋という代表的な分類がある
- 材料では、鋼・RC・PC・複合・新材料が、現代の橋を支えている
- 実際の橋は、これら3つの軸の組み合わせとして捉えられる
それぞれの分類をより深く知りたいときは、本文中で紹介した個別の記事をのぞいてみてください。橋の世界は、知れば知るほど、奥行きが広がっていきます。


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