はじめに
鉄筋コンクリート(RC)は、橋をはじめとする多くの構造物で使われている、代表的な材料です。コンクリートと鉄筋という、性質の異なる2つの材料を組み合わせることで、それぞれの長所を活かした構造が実現できます。
では、鉄筋コンクリートでできた橋の部材は、どのような考え方で設計されているのでしょうか?そこには、2つの材料の役割分担という、鉄筋コンクリートならではの発想があります。
この記事では、鉄筋コンクリート部材の設計について、コンクリートと鉄筋の役割分担、コンクリート特有の現象、そして設計で気を配る細部の3つの視点から見ていきます。鉄筋コンクリートを使った橋の全体像については、以下の記事で解説しています。
【鉄筋コンクリート橋を詳しく知ろう|RC橋の構造と特徴を解説】 https://hashiwatashi.com/reinforced-concrete-bridge-details/
コンクリートと鉄筋の役割分担
鉄筋コンクリートを理解する鍵は、コンクリートと鉄筋が、それぞれ得意なことを分担している点にあります。
コンクリートは、圧縮には強い一方で、引張には弱いという性質を持っています。引っ張られると、比較的簡単にひび割れてしまいます。一方、鉄筋は引張に対して非常に強い材料です。
そこで、鉄筋コンクリートでは、圧縮はコンクリートが受け持ち、引張は鉄筋が受け持つ、という役割分担をさせます。お互いの弱点を補い合う、巧みな組み合わせです。
この役割分担は、部材の設計の考え方にも、はっきりと表れています。曲げを受ける部材では、中立軸を境に、片側が圧縮、もう片側が引張になります。
【曲げ部材の断面力と応力の関係|橋の桁の中で起きていること】 https://hashiwatashi.com/bridge-bending-stress/
このとき、圧縮側はコンクリートが力を負担します。しかし引張側のコンクリートは、引張に抵抗できずひび割れてしまうため、設計上は「引張側のコンクリートは力を負担しない」ものとして扱います。そして、引張側に配置した鉄筋が、引張の力をすべて受け持つと考えるのです。
つまり、鉄筋コンクリート部材の設計では、引張側のコンクリートははじめから力の計算に入れず、その役割を鉄筋に託す、という割り切った考え方をします。実際に、引張側のコンクリートにはひび割れが生じますが、それは想定された挙動であり、鉄筋がしっかり引張を負担している限り、部材としては安全に機能します。
このように、2つの材料の応力を別々に考えながら設計を進めるのが、鉄筋コンクリート部材の特徴です。なお、計算を進めるうえでは、鉄筋とコンクリートのなじみ方の違いを考慮した工夫もなされますが、基本にあるのは「圧縮はコンクリート、引張は鉄筋」という役割分担です。
コンクリート特有の現象
鉄筋コンクリート部材を設計するうえで、コンクリートならではの現象にも注意を払う必要があります。代表的なものが、「クリープ」と「乾燥収縮」です。これらは、鋼にはないコンクリート特有の性質で、橋を長く使ううえで重要な意味を持ちます。
クリープ
クリープとは、コンクリートに力がかかり続けると、時間とともに少しずつ変形が進んでいく現象です。
力をかけた瞬間に生じる変形のほかに、その力をそのまま保ち続けると、変形がじわじわと増えていきます。重いものを長く乗せ続けると、最初の沈み込みに加えて、年月をかけてさらに沈んでいく、というイメージです。
橋のコンクリート部材は、自重や常に作用する荷重を長期間受け続けます。そのため、設計では、このクリープによる変形の進行を見込んでおく必要があります。
乾燥収縮
乾燥収縮とは、コンクリートが乾燥するのに伴って、体積がわずかに縮んでいく現象です。
コンクリートは、固まるときに水分を含んでいますが、時間とともにその水分が抜けていきます。すると、コンクリートは少しずつ縮んでいきます。この収縮が拘束されると、コンクリートにひび割れが生じる原因にもなります。
クリープも乾燥収縮も、ゆっくりと時間をかけて進む現象です。橋のように何十年も使われ続ける構造物では、こうした長期的な変化を見越した設計が欠かせません。補修設計の現場でも、既設のコンクリート橋に見られるひび割れや変形の原因を考えるとき、これらの現象を念頭に置くことが多くあります。コンクリートは打った後も、長い時間をかけて少しずつ変化し続ける材料なのです。
設計で気を配る細部「構造細目」
鉄筋コンクリート部材の設計では、力の計算だけでなく、鉄筋の配置に関する細かな取り決めにも気を配ります。こうした細部の取り決めを「構造細目(こうぞうさいもく)」と呼びます。地味な部分ですが、橋の耐久性を大きく左右する重要な要素です。
かぶり
特に重要なのが「かぶり」です。かぶりとは、鉄筋の表面から、それを覆うコンクリートの表面までの厚さのことです。
鉄筋は、コンクリートに覆われていることで、錆びから守られています。コンクリートは内部がアルカリ性に保たれており、その中にある鉄筋は錆びにくい状態にあります。しかし、かぶりが薄いと、外部からの水分や塩分が鉄筋まで届きやすくなり、鉄筋が錆びてしまいます。鉄筋が錆びると膨張し、周囲のコンクリートを押し割ってしまうため、橋の劣化が一気に進みます。
そのため、十分なかぶりを確保することが、橋を長持ちさせるうえで欠かせません。コンクリートの品質が良いほど、そしてかぶりが大きいほど、鉄筋の腐食は起こりにくくなります。補修設計の現場でも、かぶり不足が劣化の一因になっている橋に出会うことは少なくありません。かぶりは、設計図の上では数センチの違いですが、橋の寿命に直結する、とても大切な数値です。
鉄筋のあき・定着・継手
このほかにも、鉄筋同士の間隔である「あき」、鉄筋をコンクリートにしっかり固定する「定着」、鉄筋同士をつなぐ「継手」など、さまざまな構造細目があります。
鉄筋の間隔が狭すぎると、コンクリートが鉄筋の隙間にうまく行き渡らず、すき間ができてしまいます。逆に適切な間隔を保てば、コンクリートと鉄筋が一体となって力を発揮できます。こうした細部の積み重ねが、鉄筋コンクリート部材の品質を支えているのです。
まとめ
この記事では、鉄筋コンクリート部材の設計について見てきました。
鉄筋コンクリートの基本は、圧縮をコンクリートが、引張を鉄筋が受け持つという役割分担にあります。引張側のコンクリートは力を負担しないものとして扱い、鉄筋に引張を託すのが、設計の考え方です。
また、コンクリートにはクリープや乾燥収縮という、時間とともに進む特有の現象があり、長期的な視点での設計が求められます。さらに、かぶりをはじめとする構造細目への配慮が、橋の耐久性を大きく左右します。
鉄筋コンクリートは、2つの材料の長所を組み合わせた、よくできた仕組みです。その特徴を理解して適切に設計することが、安全で長持ちする橋づくりにつながっていきます。


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