はじめに
橋というと、私たちはつい、目に見える桁やアーチといった上の部分に目を向けがちです。しかし、橋を支えているのは、地面に近い場所にある「下部構造(かぶこうぞう)」です。
下部構造は、橋を地盤にしっかりと根付かせ、上を通る車や人の重さを最終的に大地へ伝える役割を担っています。いわば、橋を足元から支える縁の下の力持ちです。
この記事では、下部構造を構成する基礎・橋台・橋脚という3つの要素について、それぞれの役割と種類、そして設計の考え方を見ていきます。橋の各部位の全体像については、以下の記事で整理しています。
【橋の各部位を知ろう|上部構造・下部構造・基礎の役割】 https://hashiwatashi.com/bridge-parts/
下部構造は、大きく分けて「基礎」「橋台(きょうだい)」「橋脚(きょうきゃく)」の3つから成り立っています。順番に見ていきましょう。
基礎:橋を地盤に根付かせる
基礎は、下部構造の最も下にあって、橋全体の重さを地盤に伝える部分です。橋がどっしりと安定して立っていられるのは、この基礎が地盤をしっかりとらえているからです。
基礎には、地盤の状態に応じて、いくつかの種類があります。
「直接基礎(ちょくせつきそ)」は、しっかりした地盤が比較的浅い場所にある場合に使われます。基礎を地盤の上に直接置く、最もシンプルな形式です。良い地盤がすぐ下にあれば、複雑な工夫をせずに橋を支えられます。
「杭基礎(くいきそ)」は、良い地盤が深い場所にある場合に使われます。地中深くに杭を打ち込み、その杭を通じて、深い場所にある丈夫な地盤に橋の重さを伝えます。地表近くが軟らかい地盤でも、深い場所の固い層に届かせることで、橋を安定して支えられます。
「ケーソン基礎」は、箱状の構造物を地中に沈めて造る基礎です。大きな力を支える必要がある場合や、水中での施工が必要な場合などに用いられます。規模の大きな橋の基礎として使われることがあります。
どの基礎を選ぶかは、その場所の地盤の状態によって決まります。地盤を丁寧に調べ、最も適した基礎形式を選ぶことが、橋の安定の第一歩になります。
橋台:橋の両端で支える
橋台は、橋の両端に位置して、上部構造を支える台です。橋の出発点と終着点で、桁をしっかりと受け止めています。
橋台には、上部構造を支えるという役割に加えて、もう一つ重要な役割があります。それは、橋の背面にある土砂が流れ出さないように留めておく「壁」としての役割です。橋台の裏側には土が盛られており、橋台はその土が押してくる力(土圧)を受け止めています。橋を支えながら、同時に土留めの役割も果たす。橋台は、2つの仕事を兼ねた構造物なのです。
橋台にはいくつかの種類があります。「重力式橋台(じゅうりょくしききょうだい)」は、自らの重さで土圧に抵抗する、どっしりとした形式です。「逆T式橋台(ぎゃくティーしききょうだい)」は、アルファベットのTを逆さにしたような断面を持ち、コンクリートと鉄筋を効率的に使った形式です。「控え壁式橋台(ひかえかべしききょうだい)」は、壁を補強する控え壁を設けた形式で、高さのある橋台に用いられます。「ラーメン式橋台」は、枠状の構造を持つ形式です。
橋台は、パラペット(胸壁)、躯体(くたい)、フーチングといった部分から構成され、一般的にコンクリートで造られます。橋の端部にあるため、川の流れや波によって周囲の土が削られる「洗掘(せんくつ)」にも備える必要があります。
橋脚:橋の中間で支える
橋脚は、橋の中間に位置して、上部構造を支える柱です。長い橋が谷や川を渡るとき、その途中に立って桁を支えているのが橋脚です。
橋が短ければ、両端の橋台だけで支えられるので、橋脚は必要ありません。しかし、橋が長くなると、途中で支える点がないと桁がもたなくなります。そこで、橋脚を配置して、桁を途中で支えるのです。
橋脚にもいくつかの種類があります。「逆T式橋脚」は、橋台と同じく逆Tの断面を持つ形式です。「ラーメン式橋脚」は、複数の柱を横ばりでつないだ枠状の形式で、幅の広い橋などに用いられます。平地や幅広の河川、都市の中などでは、それほど高くない橋脚がいくつも連なって立ち並ぶ光景もよく見られます。
橋脚の設計で特に重要になるのが、地震への備えです。橋脚が高くなるほど、地震のときに大きく揺れやすくなるため、耐震安定性の検討が欠かせません。また、河川や海の中に立つ橋脚は、流れや洗掘に対しても安全になるよう設計する必要があります。
下部構造の設計で大切なこと
下部構造の設計は、上部構造とは少し異なる考え方が求められます。上部構造が「曲げに耐えられるか」を中心に考えるのに対し、下部構造では「全体として安定しているか」が特に重要になります。
下部構造の設計は、まず形式や使用材料、形状寸法を設定することから始まります。そのうえで、安定性を確認する計算を行い、最後に断面の力や応力を計算して、断面を決めていきます。
この中で、特に重視されるのが「安定計算」です。具体的には、次のような点を確認します。橋がその重さで地盤に沈み込んでしまわないか。橋が横向きの力で滑り出してしまわないか。橋が傾いたり倒れたりしてしまわないか。下部構造の動きが、許される範囲に収まっているか。
これらは、いずれも下部構造が安定して立ち続けるための、基本的な条件です。どんなに上部構造が立派でも、それを支える下部構造が傾いたり沈んだりしては、橋全体が機能しません。だからこそ、下部構造の設計では、安定計算が大きな比重を占めるのです。
縁の下の力持ちである下部構造が、しっかりと地盤に根を張り、安定して上部構造を支える。その地道な働きがあって、はじめて橋は長く安全に使われ続けるのです。
まとめ
この記事では、橋の下部構造について見てきました。
下部構造は、基礎・橋台・橋脚の3つから成り立っています。基礎は橋の重さを地盤に伝える部分で、地盤の状態に応じて直接基礎・杭基礎・ケーソン基礎が使い分けられます。橋台は橋の両端で上部構造を支えるとともに、背面の土を留める役割も担います。橋脚は橋の中間に立って、長い橋を途中で支えます。
下部構造の設計では、沈下・滑動・転倒といった点を確認する安定計算が特に重要になります。地盤としっかり向き合い、橋全体を安定して支えることが、下部構造に求められる役割です。
普段はあまり目を向けない橋の足元にも、橋を支えるための工夫と考え方が詰まっています。


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