橋の照明とは?|局部照明という位置づけと、揺れる床の上に立つ柱の疲労を解説

橋の照明とは? 橋梁

夜、橋を渡るとき。橋の入口にさしかかると、ふいに路面が明るくなることがあります。そして渡り終えると、また暗い道へ戻っていく。

あの明かりは、たまたまそこにあるのではありません。橋という場所には、照明を必要とする理由があるのです。そして橋の上に立つ照明柱には、地上の照明柱にはない、過酷な事情も抱えています。走行する車と、吹きつける風と、そして橋そのものの揺れ。三方向から振動を受け続ける部材なのです。ここでは、道路照明の目的から、橋がなぜ特別扱いされるのか、照明の方式、そして疲労と腐食が重なる点検の急所までを解説します。

道路照明の目的

道路照明は、交通事故防止の目的で使用されています。より正確にいえば、夜間において道路の状況や交通の状況を把握するために良好な視環境を確保し、道路交通の安全と円滑を図るためのものです。

つまり、景観を演出するための照明ではありません。運転者が、路面の形を、カーブの向きを、前後の車の位置を、そして歩行者の存在を、夜でも正しく認識できるようにする。そのための設備です。道路照明施設設置基準という技術基準によって、その整備の考え方が定められています。

連続照明と局部照明——橋は「特別な場所」

道路照明は、大きく二つに分けられます。連続照明と局部照明です。

連続照明とは、ある区間に交通量が連続してあり、照明施設を設けることで高い便益が得られると認められる場合に、単路部へ連続的に設置する照明です。少なくとも500mを1単位として設置することが望ましいとされています。

そして、ここに興味深い規定があります。連続照明の定義から、トンネルと橋梁等は除かれているのです。

橋の照明は、局部照明として扱われます。局部照明とは、交差点、橋梁、休憩施設、歩道、インターチェンジなど、道路の構造上あるいは道路利用上から、特に照明施設を設置する必要がある場所に、その場所に適するように設置するものです。

つまり橋は、制度のうえで「特に照明が必要な場所」として名指しされている。ただの道路の一部ではなく、条件の異なる特別な場所として扱われているわけです。

橋のどこに照明が置かれるか

では、具体的にどのような場所に設置されるのでしょうか。

橋梁では、カーブなどの見通しが悪い所、高速道路のON・OFFランプ、インターチェンジ部、そして約50m以上の橋の両端、もしくは長大橋の上やその周辺にも設置されている例が多くなります。実際の設置基準でも、長さ50m以上の長大橋梁を原則設置箇所に挙げるものがあり、加えて見通しの悪い屈曲部や、道路の幅員・線形・勾配が急激に変化する箇所が、必要に応じて設置する箇所として挙げられています。

ここで、一つ考えてみたい点があります。なぜ「橋の両端」なのでしょうか。

橋の入口は、道路の形が変わる場所

橋の前後は、道路にとって大きな変化点です。

一般部の道路では、路肩があり、その外に法面や歩道が広がっています。ところが橋に入ると、幅員の構成が変わります。路肩が狭くなり、その外側にはコンクリートの壁高欄や防護柵が立ち上がる。橋の外側は、もう地面ではありません。

夜、この変化を運転者が認識できなかったら、どうなるでしょうか。橋の存在に気づかないまま入り、幅の狭まりに対応できず、あるいは橋台の位置で縁石に接触する。橋の入口と出口は、構造的に事故が起きやすい地点なのです。

だから照明は、橋の両端に置かれます。目的は路面を明るくすることだけではなく、「ここから橋が始まる」と運転者に伝えることでもある。照明の配置には、そういう意図が込められています。

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照明の方式——どこに、どう据えるか

照明の据え方にも、いくつかの方式があります。

方式どのように設置するか
ポール照明方式支柱を立て、その上部に灯具を取り付ける。もっとも一般的な方式
構造物取付照明方式橋の桁や高架の構造物に、灯具を直接取り付ける
高欄照明方式壁高欄などに、低い位置から灯具を組み込む
ハイマスト照明方式非常に高い支柱の上から、広い範囲を一括して照らす
低位置照明方式路面に近い低い位置に灯具を配置する

原則はポール照明方式ですが、道路の構造や交通の状況によって、他の方式が選ばれます。

とくに注目したいのが、低位置照明方式が選ばれる理由です。高速道路の設計要領では、その選定理由として、落下などにより第三者への被害が懸念される箇所であること、そして橋梁の構造や車線構成によってポール照明方式では点検が不可能または困難になる場合が挙げられています。

つまり照明の方式を決める判断のなかに、「落ちたら危ないか」と「点検できるか」という問いが正面から入っている。維持管理を前提に設計するという考え方が、こうした基準の言葉に表れています。

揺れる床の上に立つ柱

さて、ここから点検の話に入ります。橋梁上の照明設備には、走行車両や風などによる振動が生じる可能性があり、疲労による附属物本体や取付け部の損傷、取付ボルトのゆるみなどに注意が必要です。

この一文を、少し分解してみます。橋の上の照明柱がなぜ疲労しやすいのか、三つの理由が重なっているのです。

一つめは、形です。細長い柱の先端に、重量のある灯具を載せている。これは片持ち構造そのもので、揺らせばよく揺れます。

二つめが、風です。柱に風が当たると、後ろ側に交互に渦が生まれ、その影響で柱は風向きと直角の方向に揺れることがあります。地上の照明柱でも起こる現象です。

そして三つめが、橋の上ならではの理由です。橋は、動く床だということです。大型車が通れば桁はたわみ、その振動は柱の根元から直接伝わります。地面に立つ照明柱が受けるのは主に風だけですが、橋上の照明柱は、風と、橋のたわみと、通過車両の振動を、同時に受け続けます。

揺れる床の上に立てられた、揺れやすい形の柱。橋の上の照明柱は、そういう部材なのです。

疲労と腐食が、同じ一点で重なる

これだけ揺れれば、力はどこに集中するでしょうか。根元です。

柱が揺れるたび、基部には繰り返しの曲げが働きます。しかも基部には、ベースプレートとの溶接や、アンカーボルトによる締結といった、形が急に変わる部分が集まっています。疲労亀裂は、応力が集中する場所から始まる——その条件が、そろってしまう場所なのです。

そして、もう一つの問題が重なります。基部は、水と土砂がたまりやすい場所でもあるということです。

ベースプレートの上面、アンカーボルトのまわり、支柱と基礎の取り合い。こうした水平に近い面には、雨水と一緒に流れてきた土砂が堆積します。土砂は水を含み、乾きにくくします。そこから腐食が進み、支柱の断面が痩せていく。

疲労は繰り返しの力で亀裂を育て、腐食は断面を減らします。そして両者が、同じ一点で進行する。だから照明柱の点検では、基部がもっとも重要な着目点になるのです。

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点検で見るべきこと

具体的には、次のような点を確認します。

支柱の基部。腐食による断面の減少、亀裂、滞水や土砂の堆積。アンカーボルトのゆるみ、腐食、ナットの脱落。ベースプレートまわりのコンクリートに、ひび割れや剥離が生じていないか。

灯具の取付け部。アームと支柱の接合部、灯具を固定するボルト。ここがゆるめば、灯具そのものが落下しかねません。

支柱の本体。腐食、変形、傾き。塗装やめっきの劣化。そして、点検口の蓋が閉まっているか、内部に水が入っていないか。

さらに、電気設備としての側面もあります。配線の被覆の劣化、接続部の状態、内部の腐食。橋の上の照明は、構造物としても電気設備としても、二重に管理される部材です。

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落下という現実

そして、遮音壁と同じく、照明にも第三者被害の視点が必要です。

照明柱は、高い位置に重量物を掲げた構造物です。基部が腐食して断面を失えば、強風時に倒れる可能性があります。灯具の取付けがゆるめば、部品が落下します。真下を通るのは、車と人です。

橋の主構造の点検に比べ、付属物の点検はどうしても後回しにされがちです。しかし、直接的な人身被害という点では、頭上にある付属物のほうが差し迫っている場合があります。付属物という呼び名が持つ軽さと、実際の危険度は、一致していません。

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まとめ

この記事では、橋の照明を解説しました。

道路照明は、夜間の良好な視環境を確保して交通事故を防ぐための設備です。制度上、橋の照明は連続照明ではなく局部照明として扱われ、橋という場所が「特に照明が必要な場所」として位置づけられています。見通しの悪いカーブ、ランプやインターチェンジ部、そして約50m以上の橋の両端や長大橋の上に設置されるのは、そこが道路の形が変わる変化点だからです。照明方式にはポール照明をはじめ複数があり、その選定には落下のリスクと点検のしやすさまでが判断材料に含まれます。

そして橋の上の照明柱は、風、橋のたわみ、通過車両という三方向の振動を受け続けます。疲労は基部に集中し、その同じ基部に水と土砂がたまって腐食が進む。だから点検では、根元をよく見る。

夜の橋を照らすあの明かりは、渡る人の安全のために立っています。ただしその柱は、立っているだけで疲れていく部材でもある。橋の上のものは、すべて動いているのです。

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